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2024.11.08

【第10回】

大好きだけど、ここが変だよ、日本のイタリアン!

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回は日本のイタリアンの許せない食習慣についてお伝えします。
マッシ massi   webLEON イタリア人 思考する食欲

美味しいか美味しくないかよりも、伝統的な調理法かどうかが大事

日本で食べられるイタリア料理店は数えきれないほどある。都会だろうが田舎だろうが、イタリアンを食べようと思ったらわざわざ探さなくても偶然にたどり着くだろう。僕がイタリアへ里帰りしなくても寂しくならない理由はこれだよ。外に出かければイタリアにいるように美味しいパスタや魚、お肉の料理を簡単にすぐ楽しめる。

それくらい、日本のイタリアンは美味しくて何も問題がないと思われるかもしれない。でも実は、日本のイタリアンには、イタリア人として考えられない現象が見え隠れしているんだ。今回は、イタリア人が許せない日本の食習慣などについて紹介しようと思う。

イタリア人にとって、美味しいか美味しくないかよりも、伝統的な調理法かどうかが大事だ。「食感と味の組み合わせ、食べ方が正解か」という部分は意外と深く考えているよ。この日常から1ミリでも離れると、文句の祭りが始まるんだ。こういうところもイタリア人の可愛らしさを感じるよね?

さて、イタリア人のこだわりワールドに行ってみよう!
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▲ クアットロフォルマッジ(4種のチーズ)はその名の通りチーズのピッツァ。

(1)クアットロフォルマッジと蜂蜜

ピッツァが大好きな僕がイタリアにいた頃、絶対あり得ない! と思っていた組み合わせが、「クアットロフォルマッジと蜂蜜」だ。クアットロフォルマッジはチーズの独特な味とピッツァの生地が最高すぎるマッチングで、このまま食べるのが当たり前だった。日本で初めてクアットロフォルマッジを頼んだら、蜂蜜もついてきた時の衝撃ったらないよ!

「これは間違っているんじゃないか?」と思った記憶がある。そして、周りの日本人を見て、「本当に甘い蜂蜜をピッツァにかけて食べるのかよ!」と心で呟きながら、恐る恐るかけてみた。そしたら、涙が止まらないほど美味しくて、チーズの塩辛さと蜂蜜の甘みは天国にたどり着いたと思ったんだ! 今は蜂蜜なしでクアットロフォルマッジを食べられなくなったけど、イタリア人に内緒にしているよ。

(2)同じ皿に魚とお肉は一緒に載せない

続いては、ピッツァから魚とお肉の話題へ。日本では同じお皿に魚とお肉が乗っているようなワンプレートがあるよね? これはイタリアではあまりしない。魚は魚だけ、お肉はお肉だけという感覚だ。野菜がついてもいいけど、魚とお肉は一緒にしない。
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▲ 生ハムの盛り合わせ。もちろん魚介の料理余とは一緒に盛らない。

(3)山のものと海のものは一緒にしない

そして、もう一つは山のものと海のものを一緒にしないこと。例えば、アサリのパスタソースにキノコを入れない。なぜかというと、離れている場所の食材を一緒にするという考えがないからだ。味が合わなくなってしまうし、食感もなんだか違う気がする。要するに、居たたまれなくなってしまうのだ。

(4)魚介のパスタソースに粉チーズはかけない

イタリアでは絶対にしないもう一つのことは、「魚を使ったパスタソースに粉チーズをかけない」だ。もしかけようとすると変な顔で見られる。「何してんの? やめて?」と言われる可能も高い。実は一時帰国の時にペスカトーレ(海の幸)のパスタにわざとチーズをかけようとしたら、驚いた母親の目が飛んできそうなほどだった。
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▲ パニーニはイタリア風のサンドイッチ。生ハムを挟むのは定番。

(5)ハムとチーズはパンと一緒に

イタリアではハムとサラミ、チーズを食べる時には必ずパンと一緒だ。そうしないと、僕も含めて、「勿体無い! そうじゃない、もっと美味しい食べ方があるのよ‼」と言いたくなる。だから、とにかく家庭でもパニーニの種類が多くて食卓には必ずパンがついてくる。たんぱく質はハード系のパンで食べないとね。ただ食べるだけじゃダメなんだ。それぞれの味と食感が絡み合って、イタリア人のアモーレ(愛)の元になるのよ。

(6)ナポリタンは悪魔のパスタ?

ここから段々と、イタリア人が苦しめられるパスタの話になる。ナポリに存在しない「ナポリタン」はイタリア人にとって悪魔のようだ。イタリア人のなかには、「トマトを使わずにケチャップを使うなんて、失礼だ!」と思っている人が多い。イタリア人がパスタにケチャップを使ってはいけないと思っている理由は、いくつかあるよ。

まずはケチャップと言えばジャンクフードやフライポテトにしか使わない、という感覚なんだ。パスタはジャンクフードではないから、ケチャップは合わないというわけ。そして、一番の理由はケチャップの甘さだ! デザート以外の甘さにうるさい国民性ってこと。「そんなことないでしょ!」と疑っている方は、ぜひイタリアでパスタやピッツァにケチャップをかけてみてほしい。おそらくイタリア人がすっ飛んできて、食事どころではなくなるだろう。
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▲ ナポリタンは悪魔のパスタ?(笑)

(7)元気なのにスープパスタ?

未だに驚いているのは、「日本のパスタのソースの多さ」だ。オリーブオイル系のパスタでよくある気がするけど、パスタを食べ終わった後、たっぷりとお皿に残っていることがあって、スープパスタのように見えてしまう。イタリア人にとってスープパスタは、「日本のお粥」のようなものだ。だいたい、風邪をひいて弱っている時にマンマが作ってくれるもの。日本でスープパスタに近いパスタを食べながら、「僕は元気だけどなぁ」としょんぼりする時がある。イタリア人は本当に不思議だよね? このようなルールや感覚はまだまだあるよ。

(8)食中・食後に牛乳は飲まない

食べ物から飲み物に移動しよう。多くの日本人や外国人もよくやるのは、食後に牛乳入りの飲み物を頼んで飲むこと。これは、イタリア人は絶対にしない。食事中に牛乳入りの飲み物、食後のカフェラテやカプチーノなどを飲まない理由は、食事のバランスが崩れて消化が悪くなるからだ。食事中や食後はジュースとかビールとかワインとか、何でも飲むけど、とにかく牛乳だけはダメなんだ! 牛乳入りの飲み物は朝食(午前中)にしか飲まない文化なんだよね。やっぱり、イタリア人は細かすぎて変わっている(笑)。
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(9)水に氷は入れない

これは、あまり知られていないと思うけど、イタリア人は氷が苦手な人が多い。だから、氷なしのお水を飲むことが多い。冷たすぎると体調が崩れてしまうから、あったかい料理と冷たすぎる飲み物は混ぜないことが当たり前になっているよ。逆に日本では氷が多くて冷たすぎる飲み物が一般的だ。このギャップは僕もいまだに耐えられない。

一見、意味不明なこだわりにも、ちゃんとした理由があれば、なんとなく「なるほど」とならない? イタリア人にこのこだわりから外れたものを出すと、ジェスチャーが止まらずに文句が永遠に続いてしまうだろう。まあ、イタリア人だから許してしまうよね?

一方で僕は、日本のように自由な食べ方も楽しくて大好きだ。イタリアと日本がこんなに上手くいく理由は、やっぱり恋愛のような関係だからかも。「好き」と「嫌い」の気持ちを繰り返しながら、いいバランスが取れているんだ。みなさん、これからもアモーレを注ぎながら楽しんで行こう!
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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