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2024.12.06

【特別編】

ブルガリ銀座タワーのリストランテで白トリュフのコースをいただいた僕らの周囲には白い霧がかかったよ

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載、今回は特別編です。

CREDIT :

文/スガイ マッシミリアーノ 写真/星野真琴 編集/森本 泉(Web LEON)

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はブルガリのリストランテで地元アルバ産の白トリュフを用いたコースをいただいた感想をリポートします。
ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ ひと皿目の「熊本県産 甲イカ/アーティチョーク/白トリュフ」。

ピエモンテといえば「白」。それは霧のイメージ

「ピエモンテといえば、どんな色のイメージですか」と聞かれたら、ピエモンテ人として「白」と微笑みながらそっと答える。日本人が感じている白とは完全に別の色で、その理由はピエモンテ人なら分かるはずだ。「ピエモンテにはアルプスの山があるよ」と言うだけで雪をイメージしがちだけど、白といえば、実はもっと強い存在がある。それは「霧」だよ。親友のような、恋愛のような、ピエモンテではこの霧が、命の元だと言っても過言ではない。

この真っ白な霧に初めて囲まれると恐怖感が訪れるかもしれない。でも、この霧は自然と地元人を守っているんだ。この霧の中から、世界トップクラスの白トリュフが生まれる。ピエモンテは白と黒のトリュフで世界中に注目されているのよ。ピエモンテ人から見ると、トリュフは高級な食材というより、特別な仲間に近い。
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ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ 左はシェフのルカ・ファンティンさん。
僕がイタリアにいた頃、秋になるとアルバで行われるトリュフ祭りによく行っていた。アルバは僕の地元カッザーレモンフェラートからクルマで1時間ほどのところにある、同じピエモンテ州の地域。もちろんアルバでも秋は霧が濃くなり、白い靄ががかかる中で家族がワクワクしながら祭りを楽しんでいた。帰り道では買ったトリュフをどう使うか、興奮しながら話し合っていた記憶がある。家族の温かさがいつもより深かったという思い出がいまだに残っているよ。

また、僕の家庭では、日曜日の午前中からお婆ちゃん家で家族が集まる習慣があった。1日かけてみんなで一緒に過ごしたり遊んだりして、自然に心の奥からリラックスできる。秋には僕たちやお婆ちゃんが朝霧の濃い時間に収穫したトリュフを持ち寄って、トリュフ料理を食べていた。お婆ちゃんお手製のトリュフリゾットの味は、今でも忘れられない。地元を大切にして、霧のおかげで世界のどこにもない宝物のような時間、料理が生まれるなんて。これがピエモンテ人の心だよ! 

だから、トリュフは小さいのになんでこんなに高い? と思ったことがない。お婆ちゃんの喜び、家族の笑顔、地元へのリスペクト、忙しない日々を忘れてまったり過ごす時間、この組み合わせこそがピエモンテなんだよ。今、日本に住んでいる僕が少年時代の家族との食事を思い出すと、ザーザー降りのように涙が止まらない。
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ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ 2皿目の「北海道産 牡丹海老/茄子/白トリュフ」。
こういった理由で、僕にとっての「霧」は「トリュフ」、そして「家族との美しい思い出」に繋がるんだ。そろそろまたピエモンテの霧に会いたいな、感じたいなと思ったところで、あの楽しいひと時を日本で再体験できる機会が訪れた。アルバで取れる世界一美味しいトリュフと、日本で作られた最高のトリュフ料理という組み合わせは、お婆ちゃんが作っていた料理に並ぶほどうれしさが噴水のように吹き出す。そんな特別な料理をブルガリ銀座タワーに入っている「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」でいただいてきた。ここで、あのピエモンテの白トリュフと再会できたよ。
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僕たちのテーブルが霧に囲まれたように感じた

ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ 皿ごとに白トリュフを山のようにかけてくれる。マジか!
このお店では自分の目の前で料理にトリュフをかけてくれる。その見た目のインパクトも強いけど、その後に漂ってくる香りは、心がふわふわと浮かぶような気持ちになる。薄くスライスされたトリュフの断面を見て、その模様はピエモンテの土地に見えていた。イタリア人シェフのこだわりで「ピエモンテ」「イタリア」「日本」の味と調理法が一つのお皿に絞られた料理を前に、ピエモンテの家族と地元の思い出が徐々によみがえってきた。すべての料理にトリュフをかければかけるほど、ピエモンテが本気で懐かしく感じられた。
ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ 本日のコースは料理8品にデザート2品。すべていただいたら天にも昇る気持ちだ。
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不思議なのはこのコースを食べているうちに、僕たちのテーブルが霧に囲まれたように感じたことだ。真っ白な空間に閉じ込められているようだけど、不安な気持ちにはならず、何も見えなくてもなぜか安心感がある。ブルガリの空間とトリュフの間に挟まっていた僕は、「霧が守っているトリュフ」というような物語が始まった?と思った。

ピエモンテのようにトリュフは見た目が地味で、何も感じないかもしれないけど、少し近づいて見た目の壁を越えれば、その瞬間に人生が変わる。トリュフはそのまま生でスライスするだけで、どの料理にも合うなんて驚きだよね? しかも、こんなに薄いのに口に入れた瞬間、高級感が特別感に変わる。サッと霧が晴れて、家族の笑顔や故郷の景色が走馬灯のように浮かんでくるんだ。我に返って、テーブルを囲む空間と相手との会話は、トリュフのように深くなる。
ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ 3皿目「岩手県産 帆立貝/茸/白トリュフ」。
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ピエモンテ人として、トリュフとの関係は恋愛のように感じる

今回、食べて驚いたのは、「日本の新鮮な海老とホタテ」「海のないピエモンテで取れたトリュフ」という、海と土の組み合わせ。共通点が一つもないはずなのに違和感がなくて、海と土が仲良くしているんだと思いながら完食してしまう。知っているリゾットもパスタも食べ出したら新発見できて、まだ霧の中にいるように感じながらもトリュフの下に隠れている料理は完食まで楽しめる。
ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ 7皿目「北海道産 キンキ/ひよこ豆/落花生/白トリュフ」。
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自分の目の前をトリュフが来たり行ったりしていて、ブルガリの空間は宝石箱のように見えてきた。時間が止まったように感じていたけど、気がつけば数時間が経っていた。接客の優しさ、シェフとの会話、相手との距離はトリュフの力で家族のようになった。気を遣わずに自分らしくいられる部分が大事だ。
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▲ 8皿目「北海道産  蝦夷鹿/無花果/白トリュフ」。
ピエモンテ人として、トリュフとの関係は恋愛のように感じる。たくさん会えないからこそ、一緒になるとアモーレ(愛)が止まらない。この気持ちでデザートまでトリュフをかけて、最後の最後まで喜びが溢れる。トリュフ料理もそうだけど、料理との出会いは一瞬で、別れも一瞬だよ。これで時間の大切さがわかるんだ。
ブルガリ ルカ・ファンティン トリュフ LEON マッシ Massi
▲ デザートの「ミルクのコンポジション」にも白トリュフが。
数十年前に食べたトリュフとその思い出を、銀座のブルガリで再び出会えたことに感謝する。みなさん、トリュフを食べたことがある人もない人も、僕が感じた霧との関係を思い出すことで、一生心に残ると思うよ。命が短いトリュフと、特別感溢れるイル・リストランテ ルカ・ファンティンのおもてなしで、ピエモンテ人の宝物を楽しんでくれたらうれしい!
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マッシ massi   webLEON イタリア人 思考する食欲

● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
公式X

イル・リストランテ ルカ・ファンティン

イル・リストランテ ルカ・ファンティン

住所/東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー
営業時間/ディナー 17:30 – 20:00 (ラストオーダー)
定休日/日・月曜
予約専用TEL/03-6362-1270(11:00-17:00)
公式HP/イル・リストランテ ルカ・ファンティン
※白トリュフのメニューについては電話でお問合せください。

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