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2024.12.13

【第12回】

宮古島と伊良部島で食べた郷土料理には、イタリアと意外な共通点があった

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回は宮古島に旅行に行って体験してきた沖縄料理の思い出を語ります。
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沖縄は日本語が通じる海外? と何度も思った

飛行機に乗って南へ向かう。到着して機体を降りた瞬間、気持ちいい暖かさに抱きしめられているようで、穏やかな心になる。既に冬を感じる金沢の寒気と比べると、本当に11月末なの? と同じ国にいるのか分からなくなる。だから、沖縄は憧れだよね。

今回訪ねたのは、海の透明感が魅力の宮古島だ。年中過ごしやすい天候とジャングルのような濃い緑の植物、まったり感がある島の日常生活を見て、日本語が通じる海外だと思ってしまった時が何回もあったよ。このような気持ちは読者も体験したことがあるよね?
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▲ こちらは宮古島の海。行ったのは11月末だけど、まだ暖かかった。
宮古島と伊良部島に滞在中食べた郷土料理は、イタリアと意外な共通点があると改めて目が覚めるような思いがした。普段、「イタリア料理」とか「日本料理」という言葉を使いがちだけど、実はイタリア料理も日本料理も存在しないことを知っているよね? 沖縄で食べた素晴らしい料理の数々は僕が住んでいる石川県ではほとんど目にしたことがなく、石川県の料理も沖縄にないことがほとんどだ。

すべての料理を「日本料理」と一括りにするよりも、「郷土料理」としてその地域の食文化と歴史、アイデンティティを意識することが大事だと思わない? 調理方法と食べ方を守ることで、日本国内を回っていても海外旅行をしている気分になるのよ。「日本料理」という考え方を「郷土料理」と変えるだけでこんなに楽しめるなんて。言葉にならないほど新発見ができるから、みなさんもぜひやってみてほしい。
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もずくが天ぷらになるのはびっくりするよね?

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▲ もずくは生も美味しいけど、天ぷらの味わいも驚き!
島巡りをして気がついたのは、多くの飲食店が普通の住居のように見えること。店に着いたはずだけど、それが合っているかどうかドキドキする。この流れで、伊良部島の砂糖きびに囲まれている居酒屋に入った。メニューを読み出したら「え? これは何?」「こんな使い方もあるの?」と驚きの連続だった。お通しとして生もずくが出てきたのだけど、外国人から見ると「これが食べ物になる?」と思うことが多いだろう。しかも沖縄では、もずくを天ぷらとして調理することもある。天ぷらといえばエビ天などのイメージがあるけど、もずくが天ぷらになるのはびっくりするよね?

なんこつソーキも頼んだらなんと、ネギだけではなく紅生姜も乗っていて彩りが非常に美しい! お肉だけではなく出汁も飲んで味わう料理ということで、食材を隅から隅まで楽しめる。お肉の柔らかさはもずくの天ぷらと同じで沖縄の島暮らしを感じた。なぜかというと、シンプルな調理で手間ひまかけるところにまったり感が伝わるから。食べた後に口に残る塩分は、まろやかで沖縄の海を感じる。
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▲ 紅生姜を載せたなんこつソーキ。彩が美しい!

「あ! イタリアにもよくある料理名だ」と声が出た

居酒屋に行ったばかりと分かっていても翌日の夜、また別の居酒屋に入った。そこで、深く考えさせられた料理に出会ったのだ。なんと、「島らっきょうの天ぷら」があった! らっきょうといえばカレーのイメージだった僕は、「まさか、らっきょうまで天ぷらにしちゃうなんて!」と驚いた。そして、日本在住十数年目にして、僕はらっきょうと沖縄の島らっきょうの違いを初めて知ったのだ。本土のらっきょうに比べて島らっきょうは小振りだけど辛味と香りが強く、塩漬けにして食べることも多いそう。これを知った時に「だから天ぷらにしているんだ」と呟きながらぺろぺろと食べていた。
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▲ まさか島らっきょうが天ぷらになるとはね!
メニューをさらに見てみると、初めて見た島らっきょうの天ぷらの隣によく知られている「チャンプルー」を見つけた。あまり見たことがない料理から僕も食べたことのある料理へのギャップが面白くて、人生のように料理も何が起こるか分からないとよく理解できたよ。

沖縄に行くたびに必ず頼むチャンプルーは今回、フーチャンプルーにした。いつも思うけど、いろんな食材を一緒に炒めるというシンプルな料理を食べ出したら一瞬でなくなるよね。チャンプルーは沖縄方言で「ごちゃまぜ」という意味だと聞いた時に、「あ! イタリアにもよくある料理名だ」と声が出た。イタリアでは、調理法からそのまま名前にしている料理が割と多い。たとえば、トスカーナの郷土料理である「リボリータ」は、煮込むという意味の「bollita」に「再び」を意味する「ri」からできたんだ。
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▲ フーチャンプルー。チャンプルーは沖縄の方言で「ごちゃまぜ」の意味だ。
次の日のランチ時間。「何を食べようかな〜」と街中を探索していると、ある文字が書いてある看板を見つけた。それは、「沖縄そば」だ。そういえば沖縄に行くと必ず食べるんだった! と思い出して、急いでお店に入った。

沖縄そばの麺は、いつもの蕎麦粉からできた蕎麦と比べると、どう見ても色も太さも違う。名前も気がついた?蕎麦ではなく、そばだ。漢字をひらがなにするだけで、まるで別のものに見えてしまうと思うのは僕だけではないよね? 実際に、沖縄そばは蕎麦粉ではなく小麦粉で作られている。そばと言いながら、イタリアの生パスタに近い気がする。外国人にとっては蕎麦粉より小麦粉の方が馴染みがあるから、沖縄そばは多くの外国人に人気なんじゃないかな。
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日々新しい発見や学びが生まれることの喜び

今回は沖縄そばではなくソーキそばにした。ソーキそばは沖縄そばの種類の一つで、二つの違いはトッピングのお肉の種類と味付けだそう。沖縄そばは豚バラ肉が乗っていて、かつお出汁が使われている。そして、ソーキそばは豚のスペアリブと肉の出汁の組み合わせだ。
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▲ 今回いただいた、ソーキそばのそばは小麦粉。
いただいたソーキそばは、アルデンテのようなスープパスタと立派な豚肉料理を同時に食べているような感覚。ここでピエモンテ料理を思い出したのだ。沖縄料理によく出るお肉の煮込みは、ボリート・ミストという、いろんなお肉を一緒に茹でたピエモンテ州の郷土料理に似ている。

ボリート・ミストはわかりやすくと言うと、「イタリアのお肉のおでん」だ。今回食べたソーキそばは、このボリート・ミストに麺が入ったバージョンのようで、僕にとって懐かしく感じる料理だった。まさか沖縄の郷土料理で故郷を思い出すなんて、料理とは不思議でたまらない。
沖縄では料理、空間などのすべてが穏やかに感じられる。食べたことがない料理、初めて見る言葉、聞いたことがない音楽。長く日本に住んでいても未だに新しい発見や学びが生まれることの喜びを、ここ沖縄では得られるのだ。この気持ちは日本人も同じかもしれないね。こんな喜びを大事にすれば、どこの国でもどんな料理に対しても無敵な心持でいられるよ。
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● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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