2024.12.13
【第12回】
宮古島と伊良部島で食べた郷土料理には、イタリアと意外な共通点があった
イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。
- CREDIT :
文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)
沖縄は日本語が通じる海外? と何度も思った
今回訪ねたのは、海の透明感が魅力の宮古島だ。年中過ごしやすい天候とジャングルのような濃い緑の植物、まったり感がある島の日常生活を見て、日本語が通じる海外だと思ってしまった時が何回もあったよ。このような気持ちは読者も体験したことがあるよね?
すべての料理を「日本料理」と一括りにするよりも、「郷土料理」としてその地域の食文化と歴史、アイデンティティを意識することが大事だと思わない? 調理方法と食べ方を守ることで、日本国内を回っていても海外旅行をしている気分になるのよ。「日本料理」という考え方を「郷土料理」と変えるだけでこんなに楽しめるなんて。言葉にならないほど新発見ができるから、みなさんもぜひやってみてほしい。
もずくが天ぷらになるのはびっくりするよね?
なんこつソーキも頼んだらなんと、ネギだけではなく紅生姜も乗っていて彩りが非常に美しい! お肉だけではなく出汁も飲んで味わう料理ということで、食材を隅から隅まで楽しめる。お肉の柔らかさはもずくの天ぷらと同じで沖縄の島暮らしを感じた。なぜかというと、シンプルな調理で手間ひまかけるところにまったり感が伝わるから。食べた後に口に残る塩分は、まろやかで沖縄の海を感じる。
「あ! イタリアにもよくある料理名だ」と声が出た
沖縄に行くたびに必ず頼むチャンプルーは今回、フーチャンプルーにした。いつも思うけど、いろんな食材を一緒に炒めるというシンプルな料理を食べ出したら一瞬でなくなるよね。チャンプルーは沖縄方言で「ごちゃまぜ」という意味だと聞いた時に、「あ! イタリアにもよくある料理名だ」と声が出た。イタリアでは、調理法からそのまま名前にしている料理が割と多い。たとえば、トスカーナの郷土料理である「リボリータ」は、煮込むという意味の「bollita」に「再び」を意味する「ri」からできたんだ。
沖縄そばの麺は、いつもの蕎麦粉からできた蕎麦と比べると、どう見ても色も太さも違う。名前も気がついた?蕎麦ではなく、そばだ。漢字をひらがなにするだけで、まるで別のものに見えてしまうと思うのは僕だけではないよね? 実際に、沖縄そばは蕎麦粉ではなく小麦粉で作られている。そばと言いながら、イタリアの生パスタに近い気がする。外国人にとっては蕎麦粉より小麦粉の方が馴染みがあるから、沖縄そばは多くの外国人に人気なんじゃないかな。
日々新しい発見や学びが生まれることの喜び
ボリート・ミストはわかりやすくと言うと、「イタリアのお肉のおでん」だ。今回食べたソーキそばは、このボリート・ミストに麺が入ったバージョンのようで、僕にとって懐かしく感じる料理だった。まさか沖縄の郷土料理で故郷を思い出すなんて、料理とは不思議でたまらない。
● マッシ
本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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