2025.01.30
野田クリスタル(38)「“芸人は不健康”な時代は終わった。今は健康じゃないと笑えない」
女子ウケ抜群の清潔感が失われていくオヤジ世代こそ、美容や健康に取り組むことで、同世代を出し抜けるはず。そこで美容オヤジの登場です。今回は、「クリスタルジム」ジム長も務める人気芸人のマヂカルラブリー・野田クリスタルさん(38歳)のトレーニング術に迫りました!
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写真/内田裕介 文/大塚綾子 編集/菊地奈緒(Web LEON)
「俺の人生、一度もダンクをしないまま終わるのか」と思って、筋トレを始めました
● 野田クリスタル(のだ・くりすたる)
1986年神奈川県生まれ。お笑いコンビ、マヂカルラブリーのボケ担当。2020年にピン芸人としてR-1ぐらんぷり2020優勝、コンビとしてM-1グランプリ2020優勝を果たす。芸人、「クリスタルジム」のトレーナー以外にも、独学で習得したプログラミングを活かしゲームクリエイターとして『野田ゲー』シリーズを開発など、多彩に活動中。
野田 「ダンクシュートがしたい」と思ったのがきっかけです。小中学校とバスケ部だったんですが、10年くらい前に大人になって久々にやった時、ふと「俺の人生、一度もダンクをしないままで終わるのか」と思ったんですよね。
まずはジャンプ力だと思って、近所のジムに通ってみたら風呂にも入れるし、これはいいぞと。ジムではスクワットをやりまくっていたんですけど、ジャンプ力は全然つかなかった。
そこで、自分なりに試行錯誤してトレーニングメニューを追求したら、ジャンプ力も伸びてどんどんトレーニングの面白さにハマっていった感じで、いつの間にかマッチョになっていましたね。今では片手で持てるハンドボールだったら、ダンクもできるようになりました。
── 運動は得意だったんですか?
野田 運動神経はよくないですね。中学時代はバスケのシュートも入らないし、ドリブルも上手くなかったんですけど、練習はものすごくしていました。一回も休まなかったかな。走る、飛ぶという運動能力はトレーニングでもある程度カバーできるので、練習量で下手だけど動ける体をつくったのかもしれない。負けず嫌いなんですよ。
野田 今はそんなにやってないんですよね。週3、4回、ここ(クリスタルジム)に来て1時間半くらいです。
── 続けるモチベーションはなんですか?
野田 う〜ん。10年続けてきたんですけど、ここでやめたらこれまで積み重ねてきたことが全部、意味がなくなっちゃう気がして続けているのかもしれない。この10年間入院していた時以外は、基本的にサボらずトレーニングを続けています。一番困ったのはコロナ禍ですね。どこのジムも閉館しているし、まだ「クリスタルジム」もなかったので自宅でトレーニングに励んでいました。
野田 僕のは完全に独学で、ネットやYouTubeなどで最新情報をいろいろと調べています。トレーニングに関しては海外のほうが進んでいるので、最新の論文を日本語に訳してくれている方のXをフォローしたり。
特に栄養学に関しては、トレンドもあるし年々変わるんですよ。トレーニング界隈ではエビデンスが重要なので、どこから出た情報なのかわからないものに振り回されないように注意して、しっかり読み込んでから実際に自分で試してみますね。
── 影響を受けた人はいますか?
野田 ボディビルダーのロニー・コールマンですね。ミスター・オリンピアというボディビルの世界大会で8連覇したレジェンドです。今は引退していますが、全盛期はかなり激しいトレーニングをしていて、彼の動画を見るとすっごくやる気が湧いてくるんですよね。部活前に『スラムダンク』を読むみたいな感じで、気合が入ります。
── 失敗談はありますか?
肩の所だけボコッと筋肉が付いていて、胸筋を鍛えていなかったんで、バランスが悪かったんですよ。でも、こういった取材が増えて体を撮られるようになって、「確かにダサいな。これじゃ説得力がないな」と自分でも思って、ボディメイクを意識するようになりました。
仕事が忙しくなって時間がなくなってきてからは、理想のボディラインをつくることに絞って要点だけをつまんでやっているので、体型が整ってきたかもしれないですね。
最近は「体を鍛えたいんだよね」ってよく聞くし、これは時代が来てるなと
野田 トレーニングをやめちゃう理由の1位は、きっとつまらないからだと思うんですよ。だからトレーニングメニューをこなすだけでなく、「芸人に会いにいく」という理由が1つ乗っかるだけで、ジムに行く気になったらいいなと。始めてみたら、とにかくみんなすごく楽しそうにトレーニングしてくれているので、よかったです。
── 芸人が筋トレをするメリットはありますか?
野田 基本的にはないんじゃないですか(笑)。でも体を鍛えるって、つまりは健康を気にかけていることですよね。ひと昔前まで「芸人は不健康であるべき」みたいな風潮があったと思うんですよ。
タバコ吸ってお酒飲んで、徹夜する日々を繰り返すような。健康な芸人なんて面白くないと思われている時代もあったけど、今はもうそうじゃない。健康じゃないと笑えないんですよね。
野田 そうですね。お笑いって何が正解なのか、たぶん一生誰にもわからないんですよね。世間的には失敗と言われる経験すら、笑いに繋がることがあるじゃないですか。
そんなお笑いという不確かな世界で結果を出すために、自分ができることなんて1個もない。そう考えると、すごく嫌になるしストレスも溜まるんですよね。「売れたい! 本気出したい!」という情熱はあっても、みんなどこでその本気を出せばいいのか、わからないんです。
それで、何をしていいかわからないから筋トレするんです。トレーニングは頑張っただけ、ちゃんと結果がついてくるんで。
── ストレス解消にもなるんですね?
野田 やっぱり心が整うんです。売れてない時期は仕事がないから暇じゃないですか。でも何かをやっていたいとなると、トレーニングが一番効率よくて、自分には合っていました。
── なるほど。野田さんにとってはトレーニングもプログラミング感覚なんですね?
野田 そうですね。正しいコードを打つと指示通りにプログラムが動きます。もし動かなったらパソコンが悪いんじゃなくて、自分の打ったコードが間違っているということ。
それと同じで、いくらトレーニングしても筋肉が付かないなら、トレーニングのやり方が間違っているんです。だから僕はトレーニングするうえで、根性がどうのとかは絶対に言いません。無理して頑張るんじゃなくて、自分が決めたメニュー通りにトレーニングをして、結果が出ることを楽しんでいる感覚ですね。
「マッチョはモテない」とわかってきたのに筋トレする。人は本質的に体を鍛えたいんです
野田 僕自身は変わってないと思っているんですけど、相方の村上いわく、人間に近づいてきているらしいです。
── 今までは人間じゃなかった!?(笑)
野田 きっとモンスターだったんでしょうね(笑)。
以前はトレーニングのモチベーションって、だいたいモテるためだったんですよ。でも、時代は変わりつつあって「マッチョって女性にとってはそんなに需要がないんじゃないか」とみんな気づきつつ、トレーニングブームが来ている。それって、つまり人はモテるモテないに関係なく、本質的に体を鍛えたいんですよ。
── モテるためではなく、自分のためなんですね?
野田 そうなんですよ。うちでトレーナーもしている青木マッチョなんて、「人前では恥ずかしいから脱ぎたくない」って言ってますから。彼は脱がないマッチョ芸人なんです。マッチョだから脱がなきゃいけない、マッチョだから脱ぎたがる、という偏見を、僕は「マッチョハラスメント」と呼び出したんです。マチョハラです。
野田 いや、僕はいいんです。でもみんなが単純に好きで自分のために筋トレをするという思考になってきて、逆にマッチョが愛されるようになってきたのかもしれません。自己管理がきちんとできているように見えますしね。
理想の体は『ドラゴンボール』のブロリー。トレーニングは人生を賭けたコスプレ
野田 『ドラゴンボール』っすかね。なりたいのは、伝説の超サイヤ人のブロリーです。少年漫画が好きだったので、漫画のキャラクターになりたいっていう熱があるんですよね。トレーニングは、人生を賭けたコスプレなのかもしれないです。
── 人生を賭けたコスプレ! 面白い考え方ですね。食生活についても教えてください。
野田 食生活は普段あまり気にしていないんですが、ちょうど仕事の関係で絞っている時期で、今はとにかく脂質を抜いています。逆に脂質さえカットすれば、ほかはなんでもいいくらい。僕の場合、2カ月徹底的にやれば10kg落ちますね。
日本で暮らしている以上、糖質のカットは不可能。だって、もう米うますぎますから。この国で米を食うなと言うのは無理なので、米は食べたほうがいいです。甘いものもめっちゃ好きなので、食べるなら和菓子ですね。和菓子は脂質が少ないものが多いので、和菓子と和食はダイエット向きです。ちなみに和菓子ブームもかなり来ていると思うんですよ(笑)。
野田 普段は基本的に出てきた物はなんでも食べるんですよ。でも、今みたいな絞らなきゃいけない時は、夜は食べないと決めています。ちなみに昨日の新年会でも、ひと口も口にしていません。
── 参加しているのに食べないなんて、苦行じゃないですか?
野田 苦行ですよ。せめて1カ月前だったら、居酒屋のメニューなら食べられる物も多かったんですけど。お酒はハイボールが好きなのでよく飲みます。でも、お酒で太ることはないんですよ、太るのはつまみが原因ですから。
野田 睡眠は仕事のスケジュールにもよるのでどうすることもできないけど、風呂は好きなので毎日湯船に15分くらいは浸かります。入浴剤が大好きなんですよね。なんか入浴剤って、はしゃいでるじゃないですか。入れるとワクワクするような。この前試して楽しかったのは赤ワインの入浴剤です。香りもよかったので、ぜひ使ってみてほしいです。
あとはジムで体組成計に乗っています。週1くらいですが、体脂肪率を見れば、だいたい体のことがわかるのでチェックしています。絞っている今の体脂肪率は10%くらい。10%を切るのは結構しんどいですね。
野田 プロテインとマルチビタミン系のサプリは毎朝摂っています。今はコンビニでもプロテインが買えるから、外出先でも気軽に飲めて便利ですよね。
── LEON世代に、これだけはやっておけというトレーニングはありますか?
野田 やっぱりスクワットでしょうね。逆に自分でやる場合、スクワット以外だと難しいかもしれない。スクワットは自分の体重を使ったトレーニングなので、回数に関しては一概には言えないんですが、体重が重い人は10回でもしんどいし、軽い人は30回、50回できちゃう。
だから本当にトレーニングとして取り組むなら、体が持ち上がる限りやる、ですね。基本的には立ち上がれなくなったら終わりです。辛くなってからもしばらく続けないと、ただのエクササイズになっちゃうので。でも自重トレーニングを続けると、できる回数が増えてきて辛い時間が長くなってしまうので、ジムに来てウエイトを持ってやったほうが短い時間で済むので楽ですよ。
野田 不潔なオヤジにはなりたくないなと。自分の衛生面に興味がなくなったら終わりだと思うので、ちゃんと見た目を整えておきたいですね。ジムをやっている限り自分が看板として説得力がなくならないように、トレーニングには終わりがないので、ずっと続けていくつもりです。
撮影場所は……
「クリスタルジム」
吉本興業所属の芸人やタレントがトレーナーを務める、野田さん発案によるトレーニングジム。昨年秋に西新宿へ移転・拡大して、リニューアルオープン。マッチョ芸人たちから指導を受けられるパーソナルトレーニングに加えて、日替わりでユニークなプログラムを展開するスタジオトレーニングもスタート。「通い放題プラン」月額1万7600円、「月4回プラン」月額9900円、「都度利用チケット」3300円など。
住所/東京都新宿区西新宿8-13-2 星野ビル2F
HP/https://crystal-gym.jp