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2024.09.27

なぜ日本の若者は韓国美容にハマり、K-POPスターに心酔するのか?

日本における新時代の「美しさ」を考えるうえでとりわけ興味深いのが、お隣の国、韓国からの影響。日本の若者たちが同じアジア圏に属する韓国の美意識に心酔する理由とは? 美容ジャーナリストの草分け的存在である齋藤薫さんにお話を聞きました。

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文/大塚綾子 編集/森本 泉(Web LEON) 写真協力/週刊女性、Shutterstock

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▲ ATEEZ
韓流ドラマにK-POP、コスメやファッション、スウィーツまで、コロナ禍の日本で起こった第4次韓流ブームは、まだまだ現在進行形。いまや欧米ヒットチャートの常連となったK-POPアーティストたちは、グローバルブランドのアンバサダーにも続々と抜擢されて世界を席巻。Z世代の若者たちのロールモデルになっています。

そして同じアジア圏の日本を始め、世界が心酔する韓国ビューティの魅力とは? 美容ジャーナリストとして常に「美しさ」を多角的な視点で捉え、日韓の美意識の変遷にも注目してきた齋藤薫さんにお話を聞きました。
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カッコ良さに、清潔感と色気が加わった三位一体が韓国スターの魅力

── 早速ですが、韓国における「美しさ」の基準とは、どこにあるのでしょうか。

齋藤 薫さん(以下、齋藤) 韓国のスターは「美の本質」、「魅力の本質」にとても忠実なのだと思います。まず男女ともに圧倒的な清潔感を求められる。そのうえで女性には色気や可愛げがあって、男性は顔が端正でも体はマッチョ、それがまたセクシーというのがスターの条件です。

韓国は良くも悪くも“女性は女性らしく、男性は男性らしく”という考えが強いのですが、さらに歴史的な背景から「医食同源」がベースにあり、健康と美しさは体の内側からという教えが根付いています。そこで肌の清らかさや美しさに意識が向く。それが清潔感を重視することに繋がっているのだと思います。

色気だけではトゥマッチになってしまうところを、相反する清潔感を保つことで、うまくバランスが取れているのです。
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▲ Twice
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齋藤 もうひとつ言えるのが、カッコ良さに対する意識。日本人は芸能人に限らず、カッコ良くキメるのが苦手な面があります。女性アイドルもカッコ良さより圧倒的に可愛いらしさが求められます。比べてK-POPスターは、ファッションからダンス、仕草まで常に100%のカッコ良さを追求する傾向にあります。

スターを目指す子供たちの層が厚いこともあって、みな命懸けで訓練をして、パフォーマンスの完成度を高めています。が、同時に養われるのがある意味の洗練で、それが完璧なカッコ良さの表現に繋がっていく。そのカッコ良さに、清潔感と色気が加わった三位一体が、多くの人を惹きつけるのではないでしょうか。
── たしかに日本人はカッコつけることに、ちょっと照れがちです。韓国は愛情表現もストレートだと聞きますし、欧米的なのかもしれません。

齋藤 K-POPのスターは自国の芸能界ではなく、最初からその先の世界を見ています。グローバルな視点に立てば、可愛いだけではなく色気とカッコ良さは必須なのです。しかも、儒教の教えが根底にあるので、礼儀が正しく佇まいが凛としていてどこか清らかなイメージもあることが良いギャップともなっているようです。
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▲ BTS
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── ハイブランドのアンバサダーにK-POPスターが起用されている理由もそのあたりにあるのでしょうか。

齋藤 そうでしょうね。BTSがアメリカで大ヒットした理由は、欧米的な洗練を超えるようなセンスがあったから。彼らの世代は、幼い頃から世界で活躍するスターになることを意識して育てられているので、振る舞いやファッションも含め見事に洗練されていて、英語も堪能、グローバルな美意識も身につけている。日本の芸能界など飛び越え、マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンをお手本にして育ったから、同じアジア系である日本の若者たちも、韓国のスターに憧れるという図式になるのだと思います。

媚びないけれどセクシーで異性を魅了する「ガールクラッシュ」

── なるほど。K-POPアイドルが発端となった「女性が憧れるカッコいい女性像」である「ガールクラッシュ」スタイルも人気です。男性に媚びない強い女性像は、韓国に根付いているのでしょうか。

齋藤 おそらく本来は逆で、韓国での女性の地位は決して高くはなかったと思います。前々回のオリンピックでは、金メダルを取ったアーチェリーの韓国代表の女性選手が、ショートカットにしているだけで一部から「フェミニストだ」と批判されました。韓国では長い髪が女性の美しさの象徴とされていて、髪を短く切るという行為が女性らしさを放棄、つまり男性への反発ではないかという、おかしな議論が巻き起こったのです。
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▲ NewNeans
── たしかに韓国には映画やドラマの登場人物にしても、ショートカットの女性が少ない気がします。

齋藤 韓国は日本以上に家父長的な社会で、先ほども言ったように昔から“男は男らしく、女は女らしく”という考えが根強くあります。そのアンチテーゼとして「ガールクラッシュ」という媚びないスタイルが生まれ、女性たちに支持されたのではないでしょうか。

実は90年代の日本でも「媚びない」という言葉が、キーワードとして盛り上がったことがありました。眉は針金のように細く、口紅もネイルも黒々と、男性に媚びないビジュアルこそ価値が高いとされましたが、そのメイクがあまり女性をきれいには見せなかったので、結局は廃れてしまいました。現代の韓国での「ガールクラッシュ」は、媚びないけれど、実際はちゃんとセクシーで異性を魅了するスタイル。だから人気が続いているのだと思います。
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韓国では肌の色が白く均一であることが美しさの絶対条件

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▲ OH MY GIRL
── メイクのお話が出ましたが、なぜ日本の女性がここまで韓国風のメイクにハマっていったのでしょうか。

齋藤 韓国風メイクが日本で流行ったひとつの背景は、やはり白肌です。本質的には、その人本来の肌色こそ美しいと考えるべきなのですが、韓国ではとにかく肌の色が白く、均一であることが美しさの絶対条件。肌の白さを際立たせるために、赤い口紅も流行りました。

一方、日本では色白願望がありながら、どこかで否定するベクトルが働いていたのです。コスメカウンターで自分の肌色よりも明るい色のファンデーションを選ぼうとすると「お客様はこちらの色です」と諭される。日本の美容業界では、長く「自分の肌色よりも明るい色を選んではいけない」と教えられてきたのです。ところが、韓国の女性たちは願望に忠実に明るい肌を追求している。それを取り入れてみた日本の女性たちが「やっぱりこっちの方がきれいじゃないか」と気づいて、韓国コスメやメイクにわっと飛びついたのです。

細かい話になりますが、最近日本では00番というファンデーションの色番が増えてきています。ファンデーションの色展開は、通常01、02、03番と段々トーンが暗くなっていきますが、01番よりも明るく、ほとんど黄みも赤みもない00番が日本のブランドでも新たに加わって、今とても売れているのです。
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▲ ソウルの繁華街・明洞には化粧品店が並んでいる。
── なるほど。ある時期までは、美容の分野は日本が韓国を先導していたイメージがありますが、何かゲームチェンジが起きるような出来事があったのでしょうか。

齋藤 韓国では海外に向けてビューティ産業を売り込むために、国を挙げて盛り上げているのでレベルが違います。15年ほど前にも日本の化粧品業界へ参入しようと、韓国が日本のメディアを巻き込んで仕掛けてきたことがありました。でも、当時の日本はすでに美容大国として成熟していて、韓国コスメが入り込む隙がなかったのでなかなか成功せず、撤退したブランドもすごく多かった。

それでも政府が化粧品の研究開発費のサポートや、輸出がしやすい仕組みを作って、地道にバックアップし続けた結果、K-POPスターたちの影響もあって今は大ブームになっています。品質が良く安くて可愛いので、日本の女の子たちが一気に夢中になり、国内のコスメ業界もいま慌てている状況だと思います。
── 韓国は映画産業にも手厚い支援をして、成功を治めていますよね。

齋藤 そうですね。アカデミー賞を獲った映画『パラサイト 半地下の家族』は、作品としての完成度はもちろんですが、ロビー活動の熱量もすごかったと聞きます。資金の投入もするけれど、それを結果に繋げるのが、韓国の凄いところかと思います。
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▲ 映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督(右)と主演のソン・ガンホ(左)。
齋藤 男性には兵役があり、休戦中とはいえ、形式上ではまだ戦争中の国ですから、勝ち負けに対する意識がすごく明快で、勝つための努力では絶対に負けない。その意識が強いのかと。逆に日本ではゆとり教育以降、人と争わない、運動会でも順位をつけないという流れになってきている。「勝ち負けではない」という考え方も良いことですが、結果に結びつけるのが難しくなって面もあるように思います。

ただ問題点もあって、昨今日本の子供たちが必要以上に容姿を気にして、美容整形手術へのハードルが下がっていたり、皆が同じ方向の美しさを求めるなどしているのは、韓国の影響がないとは言えないでしょう。

※後編に続きます。

齋藤 薫(さいとう・かおる)

雑誌『25ans』の編集者を経て独立。日本における美容ジャーナリストの草分け的存在として、女性誌を始め様々な媒体で、美容や女性をテーマに多数の連載エッセイを執筆。執筆活動以外にも化粧品の開発、アドバイザーなども務め、業界内での信頼も厚い。著書に『大人の女よ!  清潔感を纏いなさい』『だから“躾のある人”は美しい』(ともに集英社文庫)など。

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