2025.04.25
【第21回】
イタリア人の意味不明なこだわり。異常に甘いもの好き、なんでも硬い物好き、ケチャップ嫌いはなぜ?
イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。
- CREDIT :
文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)
イタリアン人の僕にも意味がわからない食のこだわり

正しいのはイタリアなのか、日本なのか、結果は出ないかもしれないけど、非常に面白い勝負になるんじゃないかな。今回は僕ですら理解できないイタリアのこだわりについて話したいから読者のみなさん、付き合ってくれ!

イタリア人はなぜエスプレッソを砂糖漬けにするのか
イタリアで砂糖なしのエスプレッソを飲んでいる僕は、イタリア人に「甘みのないエスプレッソは意味ないよ」とよく言われる。砂糖をエスプレッソに入れるのか、エスプレッソを砂糖に入れるのか、この違いは見分けがつかないこともある。
でも僕は、日本の生活に慣れているからかイタリア現地のスウィーツは甘すぎると感じる。日本のスウィーツはその味と食感、食べた後の満足感のバランスが良くて罪悪感もない。
しかしイタリアのソレは、甘すぎるだけではなくサイズもデカい! 日本人から見ると1人分ではなく、2〜3人分の感覚だろう。甘くなければスウィーツじゃないと強く思っているイタリア人と日本のスウィーツを食べて「美味しいけど、甘みが足りない。スウィーツを食べた感覚がない」と言われたこともある。

硬くなければ美味しいと感じられない
日本で焼き芋を食べたイタリア人の顔は未だに忘れられない。自然な甘みとその食べやすさで、「いける!」と思って食べてもらったら、嫌な顔をしながら「何だこれ! 食べ物?」と言われてショックだった。日本食に慣れた僕は一時帰国してしばらくは顎がずっと痛いのよ。イタリアの硬さに慣れなくなったからだ。

トマトは大好きだけどケチャップは許せない⁉
ところが同じトマトから生まれたケチャップは、まるでイタリア語が話せる外国人のように見えてしまう。イタリア語を話していても何か違う。トマトのピューレはギリギリセーフなのに、アメリカ文化に欠かせないケチャップはダメで、日本のナポリタンはイタリア人にとってはラスボスだ! イタリア人が大切にしているパスタに甘味もあってイタリア文化に関係ないケチャップをかけるなんて!! ここで文句祭りが始まる。ケチャップを使ったパスタは不味くはなく、ただ慣れていないだけなのに、だ。ケチャップも美味しい使い方を考えて付き合えばいいのに、本当に勿体無い。

そして、麺はすすらない。もしすすったら食マナー違反になってしまうと昔から言われている。日本では麺をすするとその美味しさが倍になるし気持ちも良くなる。待たずにすぐ食べたいから、すするのは料理人も喜ぶと思う。美味しそうに食べて完食したら最高の「ごちそうさま」になる。イタリア人がラーメンをすすらずに静かに食べているのを見ると、なんか違うと思う。
料理ごとに皿を変えないと気が済まないのはなぜ?
一方で、家庭では取り皿を使いすぎる現実がある。それぞれの料理に新しいお皿を使うのだ。パスタで食べたお皿を変えずに、そのままで次の料理を食べると言い出したら、考えられない! という顔をしながらブツブツ文句が始まる。パスタのソースが残っているし味が混ざってしまうから考えられない。たとえ、チーズとハムの時でも新しいお皿が出される。ちょっとした料理でもお皿を変えるというこだわりだ。


● マッシ
本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
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