• TOP
  • LIFESTYLE
  • イタリア人の意味不明なこだわり。異常に甘いもの好き、なんでも硬い物好き、ケチャップ嫌いはなぜ?

2025.04.25

【第21回】

イタリア人の意味不明なこだわり。異常に甘いもの好き、なんでも硬い物好き、ケチャップ嫌いはなぜ?

イタリア生まれのフード&ライフスタイルライター、マッシさん。世界が急速に繋がって、広い視野が求められるこの時代に、日本人とはちょっと違う視点で日本と世界の食に関する文化や習慣、メニューなどについて考える連載です。

CREDIT :

文・写真/スガイ マッシミリアーノ 編集/森本 泉(Web LEON)

イタリアン人の僕にも意味がわからない食のこだわり

「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)でおなじみのイタリア人ライター、マッシさんが、今回はイタリア生まれのマッシさんでも理解に苦しむ、イタリア人の食のこだわりについてお話しします。
massi   マッシ 思考する食欲 イタリア
▲ スコーンも大好きです。
PAGE 2
「イタリア人だよ」と言った途端、イタリアの習慣やこだわりなどが何でも理解できると思われがちだ。でも、実はイタリア生まれでイタリア育ちの僕はいまだにイタリアに対し意味不明に思うことが山ほどある。さらに、日本在住十数年にしてますますイタリアのことがわけわからなくなるのよ。

正しいのはイタリアなのか、日本なのか、結果は出ないかもしれないけど、非常に面白い勝負になるんじゃないかな。今回は僕ですら理解できないイタリアのこだわりについて話したいから読者のみなさん、付き合ってくれ!
massi   マッシ 思考する食欲 イタリア
▲ イタリア現地の朝食。たっぷり砂糖を入れたコーヒーにビスケットを浸して。
PAGE 3

イタリア人はなぜエスプレッソを砂糖漬けにするのか

おそらく日本人の誰もがかなり驚くのはイタリア人のエスプレッソの飲み方だ。エスプレッソの量や苦味ではなく、使う砂糖の量だよ。イタリア人はひと口で飲み切れるエスプレッソに砂糖2杯〜4杯を入れるんだ。いくら混ぜてもカップの底に砂糖が残る。エスプレッソへのこだわりが強くて、いつもの味と少しでも違うだけですぐ文句を言うくせに、砂糖によってエスプレッソ本来の風味を味わえていないことにイタリア人は気がついていないんだ。

イタリアで砂糖なしのエスプレッソを飲んでいる僕は、イタリア人に「甘みのないエスプレッソは意味ないよ」とよく言われる。砂糖をエスプレッソに入れるのか、エスプレッソを砂糖に入れるのか、この違いは見分けがつかないこともある。
砂糖の話はまだ終わらないよ。イタリアと言えば、浮かんでくるイメージはla dolce vita(甘い生活)というライフスタイルだろう。砂糖を使えば使うほど幸せになるし甘さが足りないわけではなくても、さらに甘さを足す。
でも僕は、日本の生活に慣れているからかイタリア現地のスウィーツは甘すぎると感じる。日本のスウィーツはその味と食感、食べた後の満足感のバランスが良くて罪悪感もない。

しかしイタリアのソレは、甘すぎるだけではなくサイズもデカい! 日本人から見ると1人分ではなく、2〜3人分の感覚だろう。甘くなければスウィーツじゃないと強く思っているイタリア人と日本のスウィーツを食べて「美味しいけど、甘みが足りない。スウィーツを食べた感覚がない」と言われたこともある。
PAGE 4
マッシ 思考する食欲 イタリア WebLEON
▲ ピエモンテのお菓子屋さん。

硬くなければ美味しいと感じられない

もうひとつ、イタリア人に欠かせない食べ物のこだわりは間違いなく、食感のことだ。パスタのアルデンテ、ハード系のパン、厚みのあるパニーニ。みんな硬めの食感だ。お肉の焼き加減は美味しいか美味しくないというより、硬めの食感があるかないか、そこから美味しさの判断をする。その食材と調理のことより、歯応えを優先する結果、初めて日本料理を食べるイタリア人は日本の柔らかい食感を受け入れられない。

日本で焼き芋を食べたイタリア人の顔は未だに忘れられない。自然な甘みとその食べやすさで、「いける!」と思って食べてもらったら、嫌な顔をしながら「何だこれ! 食べ物?」と言われてショックだった。日本食に慣れた僕は一時帰国してしばらくは顎がずっと痛いのよ。イタリアの硬さに慣れなくなったからだ。
PAGE 5
massi   マッシ 思考する食欲 イタリア
▲ ピエモンテの伝統的なパスタ「タヤリン」もトマト味。

トマトは大好きだけどケチャップは許せない⁉

ここからはイタリア人の耳が痛くなるかもしれない。イタリア料理で大活躍しているトマトは、そのトマトがケチャップになると親の敵のような存在に変わる。生トマトを使ったサラダやトマトソース、煮込み料理はイタリアの伝統的な一品だ。この料理には地元愛の強いイタリア人のプライドと自己満足さえも隠れている。

ところが同じトマトから生まれたケチャップは、まるでイタリア語が話せる外国人のように見えてしまう。イタリア語を話していても何か違う。トマトのピューレはギリギリセーフなのに、アメリカ文化に欠かせないケチャップはダメで、日本のナポリタンはイタリア人にとってはラスボスだ! イタリア人が大切にしているパスタに甘味もあってイタリア文化に関係ないケチャップをかけるなんて!! ここで文句祭りが始まる。ケチャップを使ったパスタは不味くはなく、ただ慣れていないだけなのに、だ。ケチャップも美味しい使い方を考えて付き合えばいいのに、本当に勿体無い。
PAGE 6
massi   マッシ 思考する食欲 イタリア
▲ イタリア現地のデザート「ミルフィーユ」。甘いうえに大きい!
パスタではもうひとつのこだわりがある。それは食べる時にスプーンを使わないことだ。スプーンを使えるのは子供と年配の方のみで、もし普通の大人がスプーンを使ったら注意されるか変な食べ方だと思われる。僕はスプーンを使った方が食べやすくてソースも多めに取れるから助かるけど、イタリアではアウトだ。

そして、麺はすすらない。もしすすったら食マナー違反になってしまうと昔から言われている。日本では麺をすするとその美味しさが倍になるし気持ちも良くなる。待たずにすぐ食べたいから、すするのは料理人も喜ぶと思う。美味しそうに食べて完食したら最高の「ごちそうさま」になる。イタリア人がラーメンをすすらずに静かに食べているのを見ると、なんか違うと思う。
PAGE 7

料理ごとに皿を変えないと気が済まないのはなぜ?

そして、日本では当たり前でイタリアにはない「取り皿の文化」にも実はこだわりがある。イタリアのレストランでは取り皿は頼まないと出てこないし、出てくる取り皿はたいてい大きめの普通の皿だ。日本のように小分けのために小さい皿を出すという意識がない。

一方で、家庭では取り皿を使いすぎる現実がある。それぞれの料理に新しいお皿を使うのだ。パスタで食べたお皿を変えずに、そのままで次の料理を食べると言い出したら、考えられない! という顔をしながらブツブツ文句が始まる。パスタのソースが残っているし味が混ざってしまうから考えられない。たとえ、チーズとハムの時でも新しいお皿が出される。ちょっとした料理でもお皿を変えるというこだわりだ。
massi   マッシ 思考する食欲 イタリア
▲ 家の食卓でも皿はたくさん使う。
PAGE 8
こだわりがあるのは悪くないけど、少し緩くするとより食事が楽しめるに違いないと思うのだがどうだろう? イタリア料理には独特の食文化と食卓のこだわりがあるからこそ、世界中に愛されているわけだけど、そのこだわりを少し離れると新しいイタリアンが始まるとも思う。日本のイタリアンがイタリア現地に負けない理由はまさしくこれ、アレンジ力と勇気だ! 読者も自分のこだわりを変えてみたら新たな情熱が生まれるかもよ?
マッシ massi   webLEON イタリア人 思考する食欲

● マッシ  

本名はスガイ マッシミリアーノ。1983年、イタリア・ピエモンテ州生まれ。トリノ大学院文学部日本語学科を卒業し2007年から日本在住。日伊通訳者の経験を経てからフードとライフスタイルライターとして活動。書籍『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』(KADOKAWA)の他 、ヤマザキマリ著『貧乏ピッツァ』の書評など、雑誌の執筆・連載も多数。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で執筆中。ロングセラー「サイゼリヤの完全攻略マニュアル」(note)は145万PV達成。
公式X

こちらの記事もいかがですか?

PAGE 9

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

登録無料! 買えるLEONの最新ニュースとイベント情報がメールで届く! 公式メルマガ

この記事が気に入ったら「いいね!」しよう

Web LEONの最新ニュースをお届けします。

SPECIAL

    おすすめの記事

      SERIES:連載

      READ MORE

      買えるLEON

        イタリア人の意味不明なこだわり。異常に甘いもの好き、なんでも硬い物好き、ケチャップ嫌いはなぜ? | ライフスタイル | LEON レオン オフィシャルWebサイト