2023.11.12
【第26回】さとうほなみ(女優)後編
エロカッコいい! ほな・いこか=女優さとうほなみの“監督をその気にさせる”才能とは?
世のオヤジを代表して作家の樋口毅宏さんが時代の先端を走る女神たちに接近遭遇! 今回のゲストは、女優のさとうほなみさんです。バンド「ゲスの極み乙女」のドラマーほな・いこかとしての顔も持つさとうさんが映画『花腐し』で、綾野 剛さんと柄本 佑さんという二大モテ男優と共演。見事な存在感を放つ、その素顔に迫る後編をお送りします。
- CREDIT :
取材/樋口毅宏 文/井上真規子 写真/内田裕介(タイズブリック) スタイリング/中澤咲希 ヘアメイク/Asuka Takei(株式会社 a-pro.) 編集/森本 泉(LEON.JP)
前編(こちら)ではミュージシャンと女優という2つの顔の関係や、今回の映画で演じた劇団の女優・祥子への思いを伺いました。後編では、さらにさとうさんの個人史から表現者としてのこだわりまで深堀りしていきます。
「才能がある人との出会いの引きがすごい」(樋口)
さとうほなみさん(以下、さとう) 板橋の果てですよ。高島平です。
樋口 いいところじゃないですか! 稲垣吾郎さんと同じですよね。
さとう 瑛太さんも一緒なんです。
樋口 高島平は3人のスターを産みましたね〜。これはすごい! 小6から和太鼓クラブをやられていたそうですが、ドラムの基礎になっていたりしますか?
さとう リズム感は養われたかもしれませんが、そもそも全然違うものなんです。 ドラムの基礎は、中学生の時の吹奏楽部で習った感じですね。
さとう 許してくれた母には感謝しています。アパレルの店長からは「そんな甘いこと言ってんじゃねえ。叶うわけねえだろ」と言われて、今に見てろよって思って辞めたんです(笑)。
樋口 見返しましたね〜。
さとう 後日、そのアパレルのCMに出たことがあって、店長、見てます? って思っていました(笑)。
樋口 それは見てますよ。それから当時「Indigo la End」をやっていた川谷(絵音)さんと出会って「ゲスの極み乙女」に繋がってくわけですから、すごいトントン拍子ですよね。やっぱり直感というか、導かれているような感じってありますか?
さとう 出会い運はすごくいいと思います。私自身面白いことをずっとやっていたいと思うなかで、同じように思う人たちと出会えているなと感じています。知らず知らずのうちに波長みたいなものがあって、引き寄せられているのかもしれないですね。
さとう いえいえ。でも、本当にありがたいと思っています。
「この人みたいになりたいって思ってしまうと、そこにしか向かえない」(さとう)
さとう 芝居って、ドラムや楽器みたいに基礎練になるものが存在しないんです。技術面ではあるんですけど、表現力に関しては人それぞれだと思うので、尊敬する方はたくさんいらっしゃいますが、こういう人になりたいというのはあまりないですね。
樋口 影響を受けすぎないようにしている?
さとう 影響を受けたら受けたでいいんですけど「この人みたいになりたい」って思ってしまうと、そこにしか向かえないように思うんです。それよりは、いろんな人と、いろんな作品を観ていようって思いますね。
さとう いえいえ。(共演した)柄本さんの知識と比べたら全然です。大の映画好きなので。
樋口 彼はサラブレッドですからね。 柄本さんのお母様は生前、映画を家のビデオで見ていると「劇場で見なきゃダメ。映画館に行かないと見たことにならない」って言っていたそうです。
さとう うわ~! すごい。
樋口 やっぱり柄本家ってすごい!と思いました(笑)。僕が三茶(三軒茶屋)に住んでた時に、よくご家族を見かけたんですけど、恐れ多くて声かけられなかったです。
さとう 私も何回かお見かけしました。朝、普通にカフェにいらっしゃったり。
さとう 柄本さんって、何人かいるのかな?(笑)
樋口 アハハ(笑)。ですよね。双子、三ツ子がいてもおかしくないかもしれない! あれだけたくさんの作品出てますし。三ツ子説、唱えましょう(笑)。
さとう 唱えましょう(笑)。
「もし叶うなら荒井監督の作品にもう1回出させてもらいたい」(さとう)
さとう どういう理由でNGを出すかは、監督さんやシーンによっても違いますよね。 そういう時が1回あったんですけど、「右目で涙を流してから、左目で涙を流して」と技術的なことを言われて、結構時間がかかってしまってヤバいって思ったんです。
樋口 いや、それできないですよ!(笑) 目薬垂らしてくれって思いますよ。
さとう 私、目薬との相性が悪くて目薬も垂れなくて。スタッフさんとかキャストさんにもすごく迷惑かけて申し訳なかったんですけど、できる! って思って、自分が揺るがなかったので、あまり不安はなかったです。後々考えると楽しかったですね。
さとう すごいですね!(笑)
樋口 生まれた時から女優、ってこういうものなんだと思いましたね。さとうさんも生まれてからずっと表現者だと思うのですが、女優としていま、一緒に作品を作りたい監督さんとかはいますか?
さとう すごくたくさん顔が浮かぶんですけど、今もし叶うなら荒井監督の作品にもう1回出させてもらいたいです!
さとう いや、もう本当に(笑)。
樋口 ちなみに今作の最後に、未発表の脚本が映るところで、自身が本を書かれた映画『Wの悲劇』(1984年公開)へのオマージュがありましたよね。僕は中学生ぐらいの時に劇場で観た人間なので、セルフカバーが出てきたもんだから「まさか荒井さん、引退作!? いやいや、まだ撮りましょうよ!」って思っちゃいました。さとうさん、もう1回出ましょう!
さとう やりたいです〜!
樋口 それにしても、さとうさんはカッコいいです。監督をその気にさせる才能があります。今日は驚きの1日になりました。本当にありがとうございました。
さとう こちらこそ、ありがとうございました。
【対談を終えて】
僕はてっきりさとうさんは、『花腐し』や『彼女』や『愛なのに』に出てきた、人生の翳を引き連れた、ありていに言えば暗い人で、つまり地で演じているのだとばかり思っていたのです。なのに。ああ、なのに。
繰り返します。
俳優さとうほなみにまんまとダマされた!
今年いちばんの「思ってたんと違う!」。
いい意味でイメージ違いすぎ。『花腐し』の祥子はそれほどのハマり役。
実際のさとうほなみさんは朝から10数本の取材を受けてクタクタにもかかわらず、あの明るさ。「LEONギャップ大賞」を差し上げたいです。
これからも僕をダマし続けて下さい。喜んで手のひらに転がされます! (樋口毅宏)
● さとうほなみ
1989年8月22日生まれ。東京都出身。2017年よりさとうほなみとして女優活動をスタート。近年の主な映画作品に『窮鼠はチーズの夢を見る』(20/行定勲監督)、Netflix『彼女』(21/廣木隆一監督)、『恋焦がれ歌え』(21/熊坂出監督)、『愛なのに』(22/城定秀夫監督)、『銀平町シネマブルース』(23/城定秀夫監督)。ドラマではABEMA「30までにとうるさくて」(22)、「六本木クラス」(22/EX)、Netflix「今際の国のアリス シーズン2」(22)、「あなたがしてくれなくても」(23/CX)、「彼女たちの犯罪」(23/YTV)など。「ゲスの極み乙女」のほな・いこかとしても活動。
● 樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ケ谷』で作家デビュー。11年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補および第2回山田風太郎賞候補、12年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。著書に『日本のセックス』『二十五の瞳』『愛される資格』『東京パパ友ラブストーリー』『大江千里と渡辺美里って結婚するんだとばかり思ってた』など。妻は弁護士でタレントの三輪記子さん。最新刊『無法の世界』(KADOKAWA)が好評発売中。カバーイラストは江口寿史さん。
SNS/公式X(旧Twitter)
■ 『花腐し』(HANAKUTASHI)
斜陽の一途にあるピンク映画業界。栩谷(綾野 剛)は監督だが、もう5年も映画を撮れていない。梅雨のある日、栩谷は大家から、とあるアパートの住人への立ち退き交渉を頼まれる。その男・伊関(柄本 佑)は、かつてシナリオを描いていた。映画を夢見たふたりの男の人生は、祥子(さとうほなみ)という一人の女優との奇縁によって交錯していく。3人の男女が織りなす切なくも純粋な愛の物語。原作は第123回芥川賞に輝いた松浦寿輝による同名小説。『Wの悲劇』(1984)や『ヴァイブレータ』(2003)などを手掛け、日本を代表する脚本家のひとりでもある荒井晴彦が監督を務めた。
11月10日(金)より全国公開中。
HP/映画『花腐し』公式サイト
■ お問合せ
アミ パリス ジャパン 03-3470-0505