コリドー街に現れたウイスキーを溺愛するモデル風美女の正体とは？

銀座コリドー街。かつては出会いを求める若者たちで夜ごと狂宴が繰り返された街も、最近は大分落ち着いてきた様子。忘年会シーズンのこの時期でも人の姿はまばらです。そんななか、長い手脚を持て余し気味に人待ち顔で佇むのはモデル＆女優の浦 彩恵子さん。今宵は我々をお気に入りのバーに連れて行ってくれるとか。

浦さんはお酒好きが高じてウイスキーエキスパート(※)の資格も取得した愛飲家。そんな彼女が、「(マスターや常連さんと)ウイスキートークが存分にできる、とても大事な場所」と言って教えてくれたのは、コリドー街近くのクラシックなバーでした。

こぢんまりした中にもゆったりとした空気が流れ、足を踏み入れた瞬間、ふっと心が落ち着くようなお店です。ウイスキーボトルで一面琥珀色に見えたバックバーには、マスターの中村さんによると「リキュールも入れると400弱」のボトルが並んでいるそう。

さて、本日の一杯目は何を飲みましょう？

「ラガヴーリンの16年をストレートで。ラガヴーリン蒸留所のウイスキーは、ピート香もありつつ上品なバランスで、リッチな味わいの一番好きなお酒。今日の1杯目は絶対これにしようと決めていました」

香りがこもるようにとテイスティンググラスに注がれた琥珀色のお酒を引き寄せると、まずはグラスを回して香りを楽しんでいる様子。独特の芳香がこちらまで漂ってきます。

「スコットランドのアイラ島にあるラガヴーリン蒸留所へ見学に行った時、現地の人からも、まずは香りでお酒の特徴や輪郭をある程度把握して、口に含む時間は長い方がいいと教わりました。酔っぱらっていくうちに、この時間は短くなるんですけどね(笑)」

そう言って十分に香りを楽しんだのち、ひと口目をゆっくり味わい「しみます」とひと言。

「私はウイスキーが大好きなので、基本ストレートで飲むことが多いですが、こういうスモーキー系のお酒はソーダで割っても香りがまったく負けないので、ハイボールにしても超美味しいです♪」

お酒は強いほうながら、「ちゃんと酔っ払います」という浦さん。普段はどんなお酒を飲むのでしょう。

「基本的にお酒全般が好きなので、食事に合わせて日本酒やワインなどなんでも。ウイスキーは特に好きで、資格を取るために勉強したのもあってよく飲みます。日本酒から始めてもワインからでも、最後にたどり着くのは絶対ウイスキーです」

ご両親がともに(酒豪が多いと言われる)九州出身で、2人のお兄さんを含む「家族全員が酒飲み(笑)」という浦家。特にお父さんはお酒オタク気質で、浦さんもごく自然にお酒の味を覚えたのだとか。ウイスキーは最初から美味しいと感じたのでしょうか。

「実家にいた頃、父が買ってきて飲ませてくれたボウモアは、初めて口にしたスモーキーな風味が『なんだ!? これはっ』という感じで、当時の私には強すぎてまったく飲めなかったんです。度数の高い焼酎も普通に飲んでいた私が初めて飲めなかったお酒で、その時はまだ、バルヴェ二―やデュワーズといった癖のない優しいウイスキーばかり飲んでいました。

でも、23歳から3年間アルバイトをしたバーでスモーキーなウイスキーを飲ませてもらった時、苦手だったはずなのに、あれ!? なんか美味しい……っていう気づきがあったんです」

「多少の背伸びもあったかもしれないけれど、これが年を重ねるということなのかな？ と。その後、本当に純粋に美味しいと感じるようになったのは、27、8歳になって、ウイスキーのことをもっと知りたい、ちゃんと勉強しようと思った時からですね」

そうどこか愛しそうにお酒との付き合いを語ると、「次はカクテル作ってもらおうかな。久しぶりにジャックローズいいですか？」とマスターにオーダー。マスターが華麗にシェイカーを操り、逆三角形のカクテルグラスに注いだのは深紅の美しいお酒です。

「ジャックローズは、カルバドスというリンゴのブランデーをベースに、ザクロのシロップとライムジュースを加えたカクテルです。生のザクロが出回る秋にはフレッシュのザクロを潰してつくるので、より鮮やかできれいな赤になります」(マスター中村さん)

お酒を美味しくするおつまみには、浦さん的「三種の神器」を。

「私好みのひと口サイズのトルコ産ドライイチジクと、スペイン産白カビサラミのフエ。それとパスタを揚げたような塩味のポップル(商品名)です。噛むと脂がとろけるフエは、外側が白カビで熟成していて香りも芳醇です」

カクテルのお味はいかがですか？

「私はカルヴァドスも大好きで、ジャックローズは甘酸っぱいけど甘すぎず、ブランデーのほろ苦さもあるので、味わいをたとえるならなんだろう……大人の青春?」

黒目がちの大きな瞳にいたずらっぽい笑みを浮かべて答えた浦さん、強いお酒を立て続けに召し上がって、いい感じに酔いが回ってきたのでしょうか?

「ちょっとほろ酔ってますが、ここからが長～いんです、私。この状態が4、5時間続いたあと、いつの間にか急にパーン! と弾けます(笑)」

3杯目からは気分を変えてソファ席へ。

「次はハイボールにしようかな。LEON.JPさんと最初にご縁ができたのはアードベッグのイベントだったから、アードベッグ10のソーダ割にしよ」

黒革のソファに腰を沈ませ、長い脚を組んでグラスを傾ける様子は、見ているこちらがクラクラッとくる色っぽさ。「一番スタンダードな10年」のソーダ割は、「もう間違いなく安心できる美味しさ。ありがとうございます、アードベッグ10年(笑)!」とウイスキーの神様(?)に思わず感謝。ずばり浦さんにとってお酒の魅力とは?

「味わいや歴史といったお酒そのものの魅力に加えて、私は馴染みのお店を作るのが好きで、20歳の頃から落ち着く空間を探して飲み歩いてきました。そこは仕事も肩書きも関係なく、いち個人として落ち着ける相手と話せる、自分にとってのサードプレイスで。それがバーなどお酒をたしなむ場所の魅力かなと思っています。

それと、私はそもそも人見知りなところがあって、普段話していて言葉に詰まったりすることもあるんですけど、お酒を飲むと会話も人間関係もいい感じに回り出すんです。だから酔ってる感覚が大好き。

行き過ぎれば失敗もするし、20代前半の頃は自分の限界量がわからず失敗も重ねましたけどね」

ならばお酒の失敗をひとつ教えてと聞くと、「ベタですけど」との前置き付きで恋愛がらみの失敗談を語ってくれました。

「お酒を飲むと昔の恋人に電話をしたくなる時があって。フリーだった頃、横浜の赤レンガ倉庫で開催されたビールのオクトーバーフェストで飲んだ帰りに、一緒に行った友人と別れて1人になったあとにふと、『彼、元気してるかな……』と思って元彼に電話したんです。

そうしたら、あんなに仲良くしてたのに、思った以上に迷惑がられたという……(苦笑)。我に返って考えたら当然の話で、彼には彼の新しい生活があるのに、酔いの勢いで申し訳ないことをしたなと思いました。お酒って、普段はしまっている感情が出やすくなっちゃいますよね」

たしかに……(笑)。そんな可愛い失敗はあるとして、お酒が飲めてよかったと思うのはどんなところでしょう。

「お酒のおかげでいろんな良縁に出会えていることです。私は基本、1人で飲みに行くのが好きなので、年代を問わず気の置けない友人ができたり、お酒がつないでくれた縁が仕事につながったことも。ここのマスターとも10年来のお付き合いで、いつ来ても落ち着ける空間にしていただけるのはすごくありがたいです」
では男性とお酒を飲む時に、相手に望むことは？

「私が一緒に飲みに行って一番うれしいのは、相手と会話が弾んだり、笑い合う場面が多くあることで。難しいことかもしれないですけど、お酒の場にいる時は、気取りすぎず、自然体でいてもらえるとうれしいです」

自分よりもお酒の弱い男はダメということはないですか？

「それは全然ないかな。お互い自分のペースで楽しく飲めるのがベストです」

すでにウイスキーエキスパートの資格をお持ちの浦さんですが、今後、お酒について学んだり深めたいことはあるのでしょうか。

「ウイスキーコニサーの資格は三段階あって、エキスパートは第一段階なので、今すぐにではないですけど、第二段階のプロフェッショナルにはトライしたいです。エキスパートの資格をとったのは29歳の時ですが、バーへ飲みに行っても若い女だからってなめられなくなったし(笑)、シンプルに自分の理解が深まり、ウイスキーをより美味しく飲めるようになったので。

お酒をこよなく愛する浦さんのお話を聞いていると、お酒を飲んでいないこちらまで楽しい気分に。取材っぽくない取材が終了すると、わざわざ店の外まで我々クルーを見送ってくれた浦さん。そう、彼女の夜はこれからなのです。

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