2024.10.02
間宮祥太朗「経験を積むことで、逆に何か大切なものを忘れてしまうこともあるかも」
次々と話題作に出演し注目の人気俳優として活躍する間宮祥太朗さん。31歳を迎え順調にキャリアを重ねてきたことで見えてきたものとは? この先の俳優としての目標とは? 森田剛さんとW主演を務める舞台『台風23号』(10月5日~)を控えた間宮さんにお話を伺いました。
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文/岡本ハナ 写真/内田裕介 スタイリング/津野真吾(impiger) ヘアメイク/三宅茜 編集/森本 泉(Web LEON)
舞台作品をつくりあげる経験は俳優のベースとして生かされる
間宮祥太朗さん(以下、間宮) 舞台デビュー当時は、演技経験もほとんどない状態で、エキストラに近い感じでした。それまでの映像作品の撮影現場では、あまり理解できない中、3~4カ月間過ごし、それがそのまま作品に残っています。でも、この舞台のおかげで作品をつくる感触を得ることができました。出演者のひとりという自覚が芽生える経験になりましたね。それ以来、定期的に舞台に立ちたいという気持ちを持ちつつも……前回の舞台『ツダマンの世界』(2022年)まで6年近く期間が空いてしまいました。
── 舞台出演を重ねることは、映像作品の演技にも影響があるのでしょうか?
間宮 “この舞台に出演したからこその表現”というものはないかもしれませんが、舞台ならではの経験は生かされています。撮影しながら次の話の台本を読むといったハードな進行をする映像作品とは違って、舞台は1カ月近く稽古をします。台本をもとに試行錯誤しながら演出家やキャスト同士ですり合わせて、ひとつのシーンを丁寧に作っていく作業は、とても贅沢な時間です。さまざまな現場において、その経験はベースとして生かされる部分はあると思います。
間宮 どちらも体力や精神力を使いますが、舞台の方が稽古期間も含めて健康的な生活を送れますね(笑)。映像作品は場所もさまざまですし、時間帯も不規則に進行しますが、舞台は朝5時集合ということはまずありません。開始と終了時間もある程度同じ時間帯なのでルーティン化されているんです。公演が続いてちょっと大変だな……という時もあるけれど、疲弊とともに一種の爽快感が味うことができます。運動してシャワーに入る感覚と近しい感じとも言えますね(笑)。
── 舞台はナマモノ。台詞が飛ぶことやアドリブの対応が必要な場合もあると思いますが、それは苦ではない?
間宮 台詞を飛ばしたこともありますが、アクシデントがあってもあまり慌てたことはありません。自分自身では覚えていないけれど(笑)、自然と流れに合わせているのかなと。緊張感をもちつつも、そんなハプニングも楽しいと思えるくらいの、いい意味でのラフさが自分にはあるのかなと思います。
間宮 張り詰めている空気感が独特だな、と感じますね。舞台で芝居をしている僕たちはマイナーチェンジがありつつも毎日同じ演出で演じていますが、お客様はこの公演だけという方がほとんどです。それだけの対価を払っているわけですし、ワクワクしている気持ちが伝わってくるので、その緊張感はもちろんあります。
芝居中にコントロールが外れ、朦朧とする瞬間を感じる
間宮 舞台を観終わった後に映画版を鑑賞しました。小劇場「ザ・スズナリ」での公演で舞台がすごく近かったこともあり、汗が飛んでくるぐらいの距離感だったんです。出演役者の熱を浴びて、一気に世界にひきこまれました。
── 待望の赤堀作品に初参加とのことで、期待していることはありますか? 事前準備などをされていたら教えてください。
── 赤堀作品への出演で「コントロールから外れるような体験ができるのではないかと予感している」とコメントがありますが、それは一体どのような状態なのでしょう? 今までにそんな経験をされたことはありますか?
間宮 あります。でも、どう言語化したらいいのか難しいですね……。大体の演技は思考からはじまり、それを伝達して、動いたり発したりします。でも、コントロールが外れると、その思考を通らずいきなり動くんです。この演技がお客さんや監督、演出家のみなさんからすると正解かどうかは分からないけれど、自動的に動きだしている瞬間があるんです。
間宮 そうです、面白いですよね。その瞬間はちょっと朦朧としているみたいな。赤堀さんの作品にはまだ出ていないけれど、観客として見ていて、そんな体験ができそうな印象を受けました。
森田剛さんはいい意味で怖さがある役者さんだと思っていた
間宮 この時点では、作品名が『台風23号』ということだけしか情報がない状態でしたが、(メインヴィジュアルの)撮影演出が幅広くて。「今から台風がくるぞ」「台風の目の中にいて、すっと落ち着いた感じ」「ふたりで遠くにいる女性をナンパしようとしている感じの表情」など(笑)、いろんなイメージで撮影しました。
── 本作品では、どのような役を演じるのでしょう?(7/24取材時点)
間宮 僕は(森田)剛さんの義理の弟で、義兄に2万円貸しているけど返ってきていない設定です(笑)。なかなか強烈ですよね。同じ街で生活している登場人物達が事件に巻き込まれてどう繋がっていくのかいかないのか。まだ憶測の域ではありますが、楽しみにしていただけたらうれしいです。
間宮 作品で観る剛さんは得体が知れなく底なしで……いい意味で怖さがある役者さんだと思っていました。赤堀さんが開いてくださった食事会の際に、全然喋らない人だと聞いていたことを剛さんにお伝えしたら、笑って「そんなことないよ。普通に喋るよ!」とツッコんでいただいて(笑)。そこから仲良くさせていただいています。
── では、初対面の食事会からぐっと距離が縮まった感じなのでしょうか?
間宮 食事会の時は赤堀さんが会話を回してくださって、稽古も本番も頑張ろうという決起集会のような雰囲気だったので、距離が縮まったのは一緒に取材を受けた時からですね。食事会では話さなかった「役との向き合い方」や「俳優としての在り方」など、剛さんの返答を聞いていると僕とも通ずる部分を感じました。
間宮 シンプルに面白そうですよね。僕がお客さんの立場としてこのキャストの皆さんの名前があがっているのを見たら、やっぱり同じことを思うだろうなと。そして、このキャストがどう絡んでいくのかも楽しみのひとつです! 集まるメンバーによって座組の空気感が徐々に形作られていくので、長い稽古期間を経て皆さんの前でお披露目する時には、一体どんな作品になるのか考えるとワクワクしますね。
間宮 どうなんですかね(笑)。直近の事例で言うと、舞台『ツダマンの世界』では先輩方が多い現場でしたが、自分から年下の雰囲気は醸し出さず、自然な空気感でした。(皆川)猿時さんと(村杉)蝉之介さんと同じ楽屋だったのですが、楽屋に入るなり吐き出す空気と一緒に「つかれたぁ~」っておっしゃるので(笑)、「はい、がんばりましょ~」と冷静にモチベーションを上げるようなやりとりをしていましたね。
「新作を絶対見たくなる俳優」になれたらひとつクリア
間宮 キャリアを重ねることでの意識の変化は特にありません。デビュー当時は、ワンクールのドラマ内でも台詞があるかないかでしたが、最近では主演もやらせていただくようになって、同じワンクールでも濃厚な時間だとは思います。ですがすべて現場によりけりなので、その都度変化はあります。
── モチベーションに変化はあるのでしょうか?
間宮 大きな変化はないのですが、僕個人というよりも社会全体の変化が凄まじいと感じます。劇場に足を運ぶ機会が限られる分、いつでもどこでも鑑賞できるネット配信が盛んになったり、新人の女優さんかと思ったらAIだったり! あれは衝撃でしたね(苦笑)。
間宮 日常生活とは違うベクトルの刺激があるからじゃないですかね。そこに快感がなければ、こうも長くは続いていない気がします。
── なるほど。俳優としての現在地をご自身ではどう評価されていますか? デビュー当時は、今のように次々主役に抜擢される姿を想像できていましたか?
間宮 正直なことを言うと、できると思わなかったらここまでやってこれていないですね。最初からいけないと思っているのに飛び込むことはしなかったと思います。先日、偶然にも僕が10代の時に演技レッスンをしてくださっていた先生に会って、演技レッスンを見学した時も「祥太朗ほど根拠のない自信があった生徒は、いまだかつていなかった」と冗談交じりに言っていました(笑)。
間宮 落ち込むことはありますよ。でも、以前の自信は根拠がなかったからこそ武装のためにあったのかなと。当時と比べたら、今は出演作品数が増えて自信の根拠やデータもあるわけで……だからこそ、かつてほど自信満々というわけではないですね。
── 根拠を持って自分を俯瞰して評価しているということでしょうか?
間宮 根拠やデータがあるからこそ自信が持てる部分もあるし、それらがあるからこそ不安だなという部分もあります。
間宮 いえ、この仕事は、進化と退化が表裏一体みたいなところがあると思っています。例えば、演技力があってもある種、面白みのない役者さんがいれば、演技経験のない方がオーディションで主役に抜擢されて、作品の中でとんでもなく輝いていたりすることもあります。技術を磨いて経験を積むことは一見進化しているようだけど、その分、何か大切なものを忘れてしまうこともあるんじゃないか……と思うと、出演作品数が増えることがすべてプラスに繋がることではないから難しいなと思いますね。
── 深い話ですね。では、今後はどのような俳優を目指していますか?
間宮 僕が観客の立場になった時を考えると、「新作を絶対見たくなる俳優」が魅力的だと思います。この俳優が出演しているから観たいという気持ちはひとつの信頼であり、期待されていることなので。「間宮祥太朗が出ているなら見たいな」に繋がると、俳優としてひとつクリアかなと思いますね。
間宮 「この間宮は見たことがあるな」という演技は避けたいですね。それは作品のテイストではなく、自分という素材に変化を出したいです。料理にたとえるなら、使用する食材は同じだけど調理方法によって味が違うことと同じで、作品によって違う間宮祥太朗を見せることができればと思います。
── 最後に間宮さんにとってカッコいい大人とはどんな人でしょう?
間宮 人生を楽しんでいる人ですね。服や身に付ける物もそうですけど、人間関係や体験、場所などすべての要素を楽しんでいる大人は、それだけの色気があると思うんです。いくつもある選択肢のなかでチョイスして、楽しみ方を見出したものは自分の中に積み重なっていくと思うので、それが多い人は魅力的に感じます。僕も、自分の中に様々な経験や言葉、いろんな感覚を入れていけたらいいなと思います。
●間宮祥太朗(まみや・しょうたろう)
1993年6月11日生まれ。神奈川県出身。2008年俳優デビュー。代表作は、映画『全員死刑』、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『破戒』、連続テレビ小説『半分、青い』、大河ドラマ『麒麟がくる』、ドラマ『ナンバMG5』
など。佐藤二郎とW主演の映画『変な家』では興行収入が30億を突破し大ヒット作に。待機作の映画『劇場版 ACMA:GAME 最後の鍵』(10月25日公開)では、主演を務める。
Bunkamura Production 2024『台風23号』
舞台は台風が迫るとある町。人間の卑俗さを暴く作風の赤堀雅秋が、抗いのようのない巨大なモノへの畏怖、そこに表出する人間の矮小さを描く。森田剛と間宮祥太朗が初共演にしてW出演する話題作。作・演出・出演/赤堀雅秋 出演/森田剛、間宮祥太朗、木村多江、藤井隆、伊原六花、駒木根隆介、秋山菜津子、佐藤B作。企画・製作/Bunkamura 東京公演 10月5日~10月27日、大阪公演11月1日~11月4日、愛知公演11月8日・9日
公式HP/Bunkamura Production 2024 台風23号
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エトロ ジャパン 03-3406-2655