2023.06.11

【オーストラリア・ノーザンテリトリーへの旅 前編】

絶景の島でワニと過ごした2泊3日がワイルドすぎた!

雄大な自然を誇るオーストラリアのなかでも、ノーザンテリトリーは神秘的な魅力に溢れる土地。周りとはちょっと違う、冒険をしたい人におすすめの旅先であります。そんなノーザンテリトリーを2回に分けてご紹介。前編では美しき秘境、ティウィ諸島をご紹介します。

CREDIT :

文・写真/大石智子

ノーザンテリトリー準州とは?

ノーザンテリトリー、つまりは北の領域。そこは人口が少なく州になりきれなかった準州で、日本の3.6倍もの面積に約25万人しか住んでいません。港区の人口(26万人超)より少なく、約5.7 k㎡にひとりの割合。実際に行って納得したのは、「こりゃ確かに住めない」ということ。

なぜなら自然がワイルドすぎて、大部分が植物と野生動物の領域だった。人間が彼らのなわばりの一部を借りているといった印象の大自然。太古から続く環境を最大限に尊重している場所でもあります。
オーストラリア ノーザンテリトリー準州
▲ 色が塗られている箇所がノーザンテリトリーで、今回はトップエンド(青と緑のエリア)への旅。
「あ〜、自然に癒される」なんて言っている場合じゃない。その迫力に圧倒されるか、下手したら負傷する。つまりはとびきり刺激的なエリアで、一見の価値ありなのです。

ノーザンテリトリーといえばかつてエアーズ・ロックと呼ばれたウルルが有名ですが、今回はそこから北に離れたトップエンド(ダーウィン、ティウィ諸島、カカドゥ)を旅しました。
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まずは州都ダーウィンにチェックイン

「ミンディル・ビーチ・カジノ・リゾート」の目の前のビーチ。
▲ 「ミンディル・ビーチ・カジノ・リゾート」の前のビーチ。
大自然というと期待するのは野生動物との遭遇。特に筆者が楽しみにしていたのがワニでした。「ワニはどれくらい見れますかね?」なんて話をノーザンテリトリー経験者に聞くと、「もういいよってほど出てきますよ」との返事。飽きるほどのワニ! そんな感覚に陥ってみたいと、期待に胸を膨らませてノーザンテリトリーの玄関口ダーウィンに向かいました。

今回はカンタス航空に乗りシドニーで1日過ごし、ダーウィンへ。なお、最も所要時間が短いのはジェットスターを利用してのケアンズ経由で片道11時間半。他、シンガポールやバリ経由もいいなと個人的には思います。バリのデンパサールからダーウィンは所要2時間40分。バリの合間に挟むのも手でしょう。

さて、筆者がダーウィンに到着したのは夜22時過ぎ。驚いたのが、ダーウィン上空まであと5分となった時、まだ辺り一面が真っ暗だったこと! 本当に人が住んでいないのだなと、漆黒の地上に感じたのでした。

その夜はビーチ沿いに立つ1983年創業の「ミンディル・ビーチ・カジノ・リゾート」にチェックイン。客室に入ると、なんと到着早々ワニに遭遇! といってもベッドメイキングのサービスとして作られたタオルのワニです。やはりこのエリアの名物はワニなのだと初日から印象づけられました。
館内音楽が昔のラジオみたいな音質で、トカゲが庭を歩き、目覚めに聴こえるのは野鳥の声。スタッフには島国的な大らかさがあり、ゆるりとした時間が流れるホテルです。素朴な老舗ホテルとは、その土地らしさが残る領域。目の前のビーチは夕陽の名所でもあり、赤道に近いからか太陽がとても大きく見えたのでした。

ゆったり2泊した翌朝、ティウィ諸島を目指すべく「Air Frontier」の小型飛行機に乗り込みます。
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「Air Frontier」はトップエンドの冒険に欠かせない老舗航空会社。ダーウィン–バサースト島のチャーターは2名貸切の場合、往復約11万8300円。
▲ 「Air Frontier」はトップエンドの冒険に欠かせない老舗航空会社。ダーウィン–バサースト島のチャーターは2名貸切の場合、往復約11万8300円。
ダーウィンを飛び立ち30分後、大海原に浮かぶティウィ諸島が見えてきます。上空からは無人島に見えますが、兵庫県ほどの広さに約2600人が暮らし、その9割はティウィ人と呼ばれる先住民です。
ティウィ人がこの島にやって来たのは4万年前と言われていますが諸説あり。
▲ ティウィ人がこの島にやって来たのは4万年前と言われていますが諸説あり。
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ターコイズブルーの海の先はエメラルドグリーンの川。
▲ ターコイズブルーの海の先はエメラルドグリーンの川。
人の手がまったくかかっていない蛇行する川に延々とジャングルが続きます。着陸するのはティウィ諸島の西に位置するバサースト島。空港はどこって感じですが、やがて飛行機が着陸体勢に入ります。正面に見えるのは茶褐色の1本道。滑走路がコンクリートではない!
アドベンチャー感満載の着陸です。
▲ アドベンチャー感満載の着陸です。
ターミナルは草むらの中。
▲ ターミナルは草むらの中。
衝撃を受けるも束の間、ざざっという着地音とともにジャングルのど真ん中に上陸したのでした。しかし、迎えのクルマは見えません。なぜならこの島には道路がほぼないから。コンクリートのない島です。移動はボート。滑走路の先が川だったことに合点がいきました。おっと、携帯が圏外です!

どんなところに泊まるか未知数ですが、向かうは2泊2名13万6500円〜からのオールインクルーシブのお宿です。
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久しぶりの圏外リゾート

迎えのボートが桟橋に到着し、リゾートのスタッフがまず行ったのはクーラーボックスからビールを取り出しゲストに振る舞うことでした。
「はい、コロナ!」
▲ 「はい、コロナ!」。
当日の気温は30度超え。冷え冷えのコロナを手渡してくれたオヤジさんが天使に見え、渇いた身体に泡が染み渡ります。よくみりゃオヤジさんの腰にはワイルドなナイフが刺さっている!

凄いところに来たなと感じますが、ここからが本番。リゾートまでの道のりはジャングルクルーズで、船はマングローブの間を進んでいきます。世界に84種あるマングローブのうち78種はティウィ諸島にあるのだとか。
ぱっと見、砂の島のようなリゾート。
▲ ぱっと見、砂の島のようなリゾート。
桟橋から20分後、いよいよ川から海に出て2泊するお宿「TIWI ISLAND RETREAT」が見えてきました。目の前がプライベートビーチと喜んだ直後、波打ち際に黒い物体が……。まさかのワニ!
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鼻の穴だけを水面から出して呼吸するクラウディア。
▲ 鼻の穴だけを水面から出して呼吸するクラウディア。
そのワニは数年前に網に引っかかっているのをレスキューしたところ、よく遊びに来るようになったそうです。クラウディアと呼ばれる女の子。クラウディア以外にも野性のワニが波打ち際にいる可能性があるから海に入るのは厳禁です。ワニのいるプライベートビーチとは斬新!
正面に見えるのが24時間自由に利用していいテラスとバー。
▲ 正面に見えるのが24時間自由に利用していいテラスとバー。写真/Mark Fitz
「随分こぢんまりしているけれど、ここがロビーエリア?」

それは私の浅はかな第一印象でした。よくある島のリゾートだと開拓して大規模な施設を建てますが、ここは真逆。木々を切り倒してまでの豪華さはいらないというスタンスです。客室、バー併設のレストラン、プール、以上。宿の周りに道すらない。

元々は釣り人たちの拠点となっていたロッジを、パースで不動産会社を営むジョンさんが19室の宿へと改築。一般的なホテルの常識にとらわれず、この島らしい長閑な過ごし方を提案しています。例えばWi-Fiは本当に必要な人だけパスワードを教えてもらう方式。携帯は圏外なので本気のデジタルデトックスです。仕事から離れ、SNSなどを見ている時間もない。

ちまちましたことを忘れられるのは、底抜けに明るい「TIWI ISLAND RETREAT」のスタッフのおかげでもあります。最初から「あれっ、前に会ったことあったけ?」と思うフレンドリーさ。

オールインクルーシブなのでバーのドリンク(ビール、ワイン、カクテル等)は飲み放題ですが、雰囲気の違うスタッフがバーカウンターにいるなと思ったら宿泊客だったりする。カウンター内のお酒や氷を客がセルフで持っていく様子もちらほら。逆に夜遅くまでテラスで飲んでいる客がいると思ったら仕事終わりのスタッフだったりする。日本にはないこのラフさが島の小さな宿らしく心地いいです。
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ミニマムな造りだから客室に電話や冷蔵庫はありません。でもコンパクトながらお洒落な空間で、過ごせば十二分と感じてくる。精製水のシャワーを浴びれば水のありがたみを感じ、白ワインが冷えていることがいつにもまして至福。滞在中は小さな幸せの連続となっていきます。なぜってこのうえなく雄大な自然に囲まれているから、何が贅沢かの物差しが変わっていく。
「オーシャン ルーム」2泊2名約13万6500円〜
▲ 「オーシャン ルーム」2泊2名約13万6500円〜。
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「オーシャン ルーム」の目の前にあるプール。
▲ 「オーシャン ルーム」の目の前にあるプール。
今回、私はメインエリアにある「オーシャン ルーム」に泊まりましたが、カップルなら離れの「ラグジュアリー グランピング テント」がおすすめ。メインエリアから1km以上も先で、離れというか離れすぎ。自力でバギーを運転しての移動となります。ここまで完全孤立した客室は見たことなく、どれだけ大声を出しても音楽をかけても、誰にも聞かれることはない。無人島にふたりっきりになった感覚を味わえるでしょう。
電源はソーラーパネルから。食事はここまで送ってもらうことができます。
▲ こちらがラグジュアリー グランピング テント。電源はソーラーパネルから。食事はここまで送ってもらうことができます。
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石や木で造られた温かみのある室内には、先住民のアートも飾られています。「ラグジュアリー グランピング テント」2泊2名約21万8300円〜。
▲ 石や木で造られた温かみのある室内には、先住民のアートも飾られています。「ラグジュアリー グランピング テント」2泊2名約21万8300円〜。写真/Rhyse Maughan
なお、メインエリアに泊まっても3分も歩けば人っこひとりいない環境に身をおけます。海とジャングルに挟まれているだけ。ここまで人工的なものが何も見えない環境はなかなかないです。
映画のポスターのような写真が撮れます。
▲ 映画のポスターのような写真が撮れます。
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雑誌で見開き掲載にしたい写真が撮れます。
▲ 雑誌で見開き掲載にしたい写真が撮れます。
島では予想外の出会いもあり。同行者4人で散歩していた時のこと、人間の楽しそうな声を聞いてイルカが波打ち際まで遊びにきたのです! 無人なのにイルカやワニはひょっこり出てくる。それがこの島の醍醐味です。

そして、忘れられないのが波打ち際散歩で見た夕暮れの美しさ。曇りで太陽が見えないと諦めたあと、雲が一気に赤く染まっていった。曇天でも抑えられない太陽のエネルギー。ほんの1分くらいでしたが、永遠に忘れられない一瞬でした。
内海で波がほぼないので夕陽がよく反射する。
▲ 内海で波がほぼないので夕陽がよく反射する。
日没後に存在する灯りはリゾートのみなので、バギーで少し離れれば満点の星空を味わえます。つまりは先ほどご紹介した離れのテントは星空を独占できる状態。やはり一度は泊まってみたいですね。
iPhoneでも撮れてしまうほどの、満点の星空。
▲ iPhoneでも撮れてしまうほどの、満点の星空。
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爆釣や大物も狙える秘境です!

元がフィッシングクラブだけあり、周辺の海や川は豊かな漁場です。というわけで2日目はボートで釣りに出発。狙うは巨大魚バラクーダです。和名はオニカマスで、その名の通り鬼デカいカマスが生息しています。リゾートを出て15分後、一投目のルアーを川におろすと30秒後に反応が! 仕込みかなってくらいの速さでハタとタツカマスがほぼ同時に釣れました。
約500種の魚が生息する漁場。
▲ 約500種の魚が生息する漁場。最初に釣れたのはハタでした。
▲ タツカマスもゲット! 釣り合宿として来る旅人も多数いるとか。
5匹立て続けに釣れたあとは静かになり、ルアーを遠くに投げるとそれを追いかける黒い影が……。またもやワニ!! ルアーを巻いても追いかけてきて、危うくワニが釣れるところでした。でもワニの様子は遊びのようにも見え、親近感が右肩上がり。この頃から自然とワニ全般をワニ太郎と呼んでいた。
腰を左右に振って泳ぎ、ルアーについてきたワニ太郎。
▲ 腰を左右に振って泳ぎ、ルアーについてきたワニ太郎。
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残念ながらオニカマスは釣れませんでしたが、釣りとジャングルクルーズを兼ねたアクティビティに飽きることはなく、珍しい野鳥にも遭遇。なお、別のグループは巨大なゴールデンスナッパーを釣って満面の笑みで帰ってきました。近くで見せてもらうと猛獣のような鋭い歯をもっていて、こりゃ指を注意しないといけない。

自分たちで釣った魚はさっそく当日のディナーとして食卓に登場しました。丸揚げにされアジア風ソースとたっぷりのハーブがかかり、淡白なハタが大変身。シェフが作るのは先住民とアジアの影響を受けたメニューの数々で、スパイスやブッシュタッカー(先住民が食するオーストラリ固有のハーブ)を多用します。ノーザンテリトリーの牧草牛のステーキも絶品でした。
他のゲストと交流する機会が多いリゾートでもあります。夕方にはみなで焚き火をしながらのアペタイムがあり、食後には希望者を募ってのイベントを毎夜開催。今回は初日が椰子の実投げ大会、2日目がリンボーダンス大会、帰る日は黒板にカラオケ大会と記されていました。

また、薄々知っていましたがオーストラリアのみなさんは酒が強い。日本人グループより遅くまで飲み、よく喋り、ご機嫌。彼らとの出会いも旅のいい思い出となるでしょう。今回は機会がありませんでしたが、この島では先住民の文化体験や彼らとの交流のチャンスもあり気になるところです。
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あっという間に2日間が過ぎ、州都ダーウィンに戻ります。最初の飛行機で真っ暗だと話したダーウィンが、ティウィ諸島のあとでは大都会に思える。過去の旅やホテルの記事で「手つかずの自然」なんて表現を多々してきましたが、もう簡単には言えない。それほど圧倒される大自然でした。

最後にひとつ、くれぐれも“サンドフライ”にはご注意を。刺されるとどれくらい痒いかは検索してくださいませ。筆者もサンドフライの洗礼を受けました。なぜ手足が隠れる服を着なかったのか、なぜオーストラリア製の強力な虫除けスプレー「BUSHMAN」(要購入!)をつけなかったのかと悔いても後の祭り。大自然は甘くない。

でも、それぐらいワイルドだからこそ、忘れられない絶景にも出会える。単に豪華なホテルとは違う「TIWI ISLAND RETREAT」での滞在は、圧倒的にユニークな時間でした。チェックアウト時、野性のワニが見送ってくれるリゾートはそうそうないです。

iPhoneの写真で見返してもハッとする景色を生で見る体験。まさに非日常の旅なのでした。そんな感想が後半も続く、ノーザンテリトリーは奥深い。

後編に続きます。

取材協力:ノーザンテリトリー政府観光局

https://northernterritory.com/jp/ja

※価格はすべて編集部調べ 1オーストラリアドル90.93円で計算

● 大石智子(おおいし・ともこ)

出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。

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