2023.07.06
【オーストラリア・ノーザンテリトリーへの旅 後編】
未開の大自然+人より多いクロコダイル! オーストラリアの秘境・カカドゥを旅した
雄大な自然を誇るオーストラリアの中でも、ノーザンテリトリーは神秘的な魅力に溢れる土地。周りとはちょっと違う、冒険をしたい人におすすめの旅先であります。そんなノーザンテリトリーを2回に分けてご紹介。後編では美しき秘境、カカドゥを中心にご紹介します。
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文・写真/大石智子
野生のクロコダイルに出会うクルーズに乗船
ところでノーザンテリトリーからの帰国後、旅好きな人たちと会った時のこと。「やっぱり田舎はいい」という話になり、ノーザンテリトリーのことを言わずにいられなかった。間違いなく、人生のなかで一番の田舎、もとい大自然でしたから。「道がない! 人がいない! すぐワニに会う!」と熱弁してしまったのです。
しかし、そう言われても何のことやら。ちょうどNetflixでノーザンテリトリーを舞台にしたリアリティ番組「ワイルド・クロック・テリトリー」を配信中で、この番組が彼の地を知るのに分かりやすい。
この湿地帯を代表する野鳥といえばカササギガンですが、「雄には奥さんがふたりいてね、雄の頭がたんこぶみたいに膨らんでいるのはヤキモチをやいた方の奥さんに殴られているからなんだ」と、生態を絡めつつ調子のいいトークを挟みます。
「クロコダイルとアリゲーターの違いは口がUかVか(クロコダイルがU)」
「ワニが噛む力は動物最強。大きなワニだとその圧力は2トンにもなるよ」
「噛むことに体力を使う分、食事は省エネ。大魚を食べる時は一度噛んでから離れ、魚がもがき死んだ頃に戻ってきて食べるんだ」
「ワニは意外と少食。鶏一匹で1カ月はもつ。餌がなくても何カ月も生きられるよ」
「長くて100年以上生きるワニの年齢は背骨の年輪で分かる。でも、その年輪を見るためには死んだワニを輪切りにしないといけないけどね」
ちなみに、まばたきしないクロコダイルの瞳や美しい羽をもつ野鳥を前にしたら、iPhoneの限界を感じました。バズーカ砲みたいな望遠レンズで撮ってみたいですね。あとやっぱり、ラコステのポロシャツを着ていくべきでした。
カカドゥへの旅にはワイルドな宿が似合う
客室はロッジとテントに分かれ、ここまで来たら後者がおすすめ。テントといえど、きちんとしたベッドが置かれ、エアコンも完備。ただし前者は全室にバスルームがつきますが、後者はシェアの場合もあり。最もランクの高いラグジュアリーテントなら安心です。ロッジ、テントともに先住民のアートを感じる装飾が施され、関連書籍が置かれているのにも注目を。
レストランで提供されるクロコダイルは養殖で、鶏を餌としているので鶏に近い味がしました。野生は魚を食べているから魚の味がするのだとか。前者は運動しないから柔らかく、後者は運動するから硬くなります。
燃えるような真っ赤な空と、薄暮の空に光る月を背にする馬たちの美しいことといったら。そして、人っこひとりいない静寂。思い返すと幻のようです。
1万年以上前に描かれた壁画に思いを馳せる
砕いた石の粉とワラルー(ワラビーとカンガルーが混ざった動物)の血を混ぜたものを絵の具にし、赤や黄色を多用。石に鉄分があるから中まで染み込んで色が残っているそうです。
家族写真代わりの集合手形や、親族内で恋仲になったふたりが勘当されるメロドラマみたいな壁画も存在。禁断の恋の結末は、男性がクロコダイルの姿になって結婚したとか。太古からクロコダイルが生息していたことも分かりますね。
ノーザンテリトリーの先住民は自分の故郷を「マイカントリー」と呼び、それは個人の強いアイデンティティを形成するもの。部族ごとに、法律、アート、家族関係、風習、言葉など、人の誕生から死に至るまでのあらゆることが部族の伝統に基づいています。そんな彼ら独自の文化を知るのもカカドゥ旅の醍醐味です。
遊覧飛行で絶景を目撃する
最後にダーウィンで旅をおさらい
ロビーの設えやピシッと張られたベッドのシーツを見て、「ヒルトン」はどんな場所にあってもワールドスタンダードがきっちり守られているとも実感。なぜビジネスで愛用されているのか分かった気がしました。絶対の安定感があって、仕事以外の何かに振り回されることがないのでしょう。
振り返ればここまで未開の地を旅したのは初めてで、興味深いのが未開のまま観光を推していること。観光客を呼ぶと考えた時、インフラを整備したり飲食店やショップを作るのではなく、そのままでいる。どことも似ていない大自然と出会ったのは、それゆえでしょう。
先住民と自然への尊厳に溢れたノーザンテリトリーは、旅先としてひと際エキゾチック。新たな価値観を知るこの冒険を、人生で一度体験してみては?
■ お問い合わせ
AAT Kings (日本語ガイド在中のツアー会社)
取材協力/ノーザンテリトリー政府観光局
※価格はすべて編集部調べ 1オーストラリアドル90.93円で計算
● 大石智子(おおいし・ともこ)
出版社勤務後フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。スペインと南米に行く頻度が高い。柴犬好き。Instagram(@tomoko.oishi)でも海外情報を発信中。