2024.01.23
featuring 時計愛好家 M・S
思いのこもったヴァシュロン・コンスタンタン、IWC、パテック フィリップ
お洒落な男性なら誰もがステキな時計を持っているものです。そこでこだわり男子に、こっそり愛用時計にまつわるエピソードをインタビュー。実に興味深いお話がアレコレと飛び出します。
- CREDIT :
写真/干田哲平 構成・文/長谷川 剛(TRS)
イベントでひと目惚れした特別なパーペチュアルカレンダー
若い頃からクルマと時計に入れ込んできたと語るM・Sさんですが、なかでも時計のコレクションは玄人はだし。幾つかある買い物のひとつではなく、情熱と計画をもって購入し日々愛用しているところが大きな特徴です。今回は特にお気に入りの3本をお持ちいただき、まつわるエピソードをお伺いしました。
まず最初はヴァシュロン・コンスタンタンの複雑型。世界的にも貴重なモデルとされるパーペチュアルカレンダー・エクストラフラット・スケルトンです。
M・S これはヴァシュロン・コンスタンタンの銀座ブティックがオープンする直前に特別なイベントがあり、その時に出会った一本。正確に言うと現物を直接見たわけではなく、映像として壁に大きく映しだされたこのモデルを見て、そのスケルトン特有の精緻な美しさに強く心動かされたのです。即座にスタッフさんに声を掛けたのですが、その時は入荷するかどうかもまだ未定ということで、もしもの時の連絡をお願いをするだけに留まりました。
M・S 当初からこの貴重なレアピースが自分の手元に来るなんて予想もしませんでした。ただ、ダメ元でオーダーを入れておいただけなので、実際に入荷案内が来たときは本当に驚きました。銀座のブティックは日本における旗艦店ですから、カスタマーの数も相当なもの。なぜ自分に回ってきたのか、今でも不思議ではあります。きっと本当に時計が好きだという情熱が伝わったのかなと勝手に納得しています(笑)。
── 確かに昨今は投機目的や一時所有を意図した買い方など、時計選びのスタイルもいろいろに変遷している様子。もちろんソレもひとつの楽しみ方ですが、ひょっとしたら時計の神様は遠くからそういった状況を見守っているのかもしれません。
M・S 時計の持つメカニズム自体にリスペクトもあるのですが、身に付けるアイテムということから、コーディネートの観点を軸にチョイスすることも多いのです。例えばこのヴァシュロンならスーツスタイルのなかでも、普段は極めてドレッシーな装いに合わせています。大事な商談の時や久しぶりにお世話になった先輩に会う時など、この時計の出番です。
── スーツスタイルひとつ取ってもいろいろなシーンがあるはず。それぞれに何本も用意しておくのでしょうか?
M・S そんなことはありません。気に入った機構を持つモデルを数本揃えるくらいです。ただし、あまりに著名なモデルには手を出さないようにしています。というのも、時計だけが目立ってしまうのが本意ではないから。特にビジネスのシーンではネームバリューが先行しているモデルは付けません。往々にしてビジネスの主題から外れてしまう気がするのです。また、個人的にあまり目立つアイテムが好きではありません。自身の時計趣味が本格化した20~30歳代は控えめを旨にしており、イエローやピンクゴールドの時計は避けてきました。その感覚が今も残っていて、どうしても落ち着いたトーンのホワイトゴールドやプラチナを選ぶことが多いんです。
出張時のお目付け役はアラーム付きワールドタイマー
憧れのモデルに繋がるパテック フィリップのグラコン
── 文字盤のデザインは、1941年以来引き継がれている同社における永久カレンダーのスタイルを踏襲したもの。M・Sさん的にはクロノグラフのないスッキリ感が特にお気に入り。そしてストラップは、パテック フィリップのブティックでオーダーしたものに替えています。
M・S これは自分の“パテック計画”に関係する大事なポイント(笑)。実は、昔からパテック フィリップのワールドタイム(5231)に憧れがありまして、しかし従来出会うモデルといえば色つきゴールドケースのことが多く、ちょっと躊躇していたのです。
けれど近年になってホワイトゴールドモデルがリリースされ、本格的に気になる一本となりました。しかもこれまでクロワゾネ文字盤の大陸図案は欧州がメイン。しかし近年の5231Gはアジアやオセアニアが中心に描かれることに加え、12時方向に日本大陸が堂々と位置取られたデザイン。これはもう絶対に「欲しい!」となったのです。
ただクロワゾネのワールドタイムは価格的にもそれなりですが、誰でもすぐに買えるというモデルではなく、まだまだ僕にとっては憧れの一本。そこでいつでも迎えられるよう、文字盤に描かれた大陸や海洋のカラーを模したベルトをまず用意しておこうと、オーダーで作ったストラップをこのグラコンに付けているのです。
M・S 複雑なメカニズムを小さなケースの内側に纏め上げるという技術にもリスペクトを持ちますが、自分を完成させるアイテムとして欠かせない装飾品であるのは確かです。コーディネートやシーンを想定して買い足していることもあって、自分自身の一部となっています。だからコレクションの時計を売ることや譲ることなどは一切考えていません。クルマや家などは替えることがあっても、時計はずっと一緒。大袈裟ではありますが、家族のようなものと今は考えています。
● M・S
大学卒業後、商社に勤務。三菱マテリアル(株)とNY証券上場外資の合弁会社にて法人営業、営業部門取締役を経験。その後取締役社長となる。2009年、ベンチャー企業設立に参画し取締役に就任。現在は次なるフィールドを目指して休養中。