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2024.09.07

バレエとミュージカルの裏側を語る「客席から見えるキラキラの倍はドス黒い」

ルッキズム批判の一方で美容整形の流行など、「美」の概念がゆらぐ現在。全身を使って美を表現するバレエの世界にも影響はあるのでしょうか? 3人のバレリーナにお話を伺いました。

CREDIT :

写真/グレイ・ジェームズ(ジゼル、クララ)、玉井 美世子(オーロラ) 取材・文/木村千鶴

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写真/Shutterstock
ルッキズムが批判される一方で、美容整形が流行りSNSでの自己アピールが過熱するなど、「美」の概念がゆらぐ現在。身体を使って美を表現するバレエの世界にも影響を及ぼしているのでしょうか。

前回(こちら)に続いて、バレリーナ経験のあるジゼルさん(32)、クララさん(28)、オーロラさん(27)さんに、お話を伺いました。

今回は、役を巡って舞台裏で繰り広げられる人間模様についてです。バレリーナにとって求められるのは外見の美しさだけではないようです。
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ジゼル(32)

3歳よりクラシックバレエを始める。小学生からさまざまな舞台に出演、大学時代より本格的にミュージカル俳優として活動。

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クララ(32)

6歳よりクラシックバレエを始める。現在ミュージカル俳優、ダンサー、ダンス講師。

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オーロラ(27)

ロシアのバレエアカデミー卒、ロシアのバレエ団に入団と同時にアカデミー大学部教師科でワガノワメソッドに基づく指導法を学ぶ。現在フリーダンサー、バレエ講師。

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業界で生き残るためにはいじめもごますりもある

── 前回は体型維持の辛さなどを伺いましたが、役をもらえなければ舞台にも立てないのですよね。バレリーナ同士での嫉妬や意地悪はあるのでしょうか。

一同 靴がなくなるのは普通にある。

ジゼル でも、子どもの頃のいじめって親同士のライバル意識に影響されていますよね。親が「あの子は先生のお気に入りだから得してる」なんて言ったりして、その雰囲気を受けてやっちゃうのかもしれません。いじめに耐えられなくてスクールを移る子もいます。

クララ 大人でもいじめはありますからね。

ジゼル 18歳の時に初めて興行のミュージカルにアンサンブルで出たんですけど、その座組で私が最年少だったんです。だから皆さん可愛がってくれていたんですが、私が一番花形のところに決まった途端に、一切誰も口を聞いてくれなくなりました。

オーロラ それは辛い……。
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── 良い役にピックアップされると仲間外れにされちゃうんですね。そんなことするよりも実力を磨いた方がいいと思うんですが。

クララ いろんなスタンスの人がいますね。お金が欲しいとか、有名になりたいとか。プロになったばかりの頃に、プロデューサーや演出家にごますりして役を取る人を目の当たりにして、業界自体に失望したことがあります。私はそこまでして仕事したくないなって思って。

── どういう場面に遭遇したんですか。

クララ 稽古場での態度がひどい女優さんだったんですが、いい役がもらえないとなると演出家に泣き付いたり、打ち上げの時には隣に座って「本当にこの作品出られてよかったです♡」なんてごまをすったり。

でも、楽屋では「お金がもらえればいいからさ〜」って言っていました。私にとっては初めての大きな公演だったし、希望を持って臨んだんですけどね。客席から観る世界と実際はやっぱり違うんだと思ってがっかりしました。

ジゼル 客席から見えるキラキラの倍くらいドス黒い。まぁでもみんな必死なんだと思うけど。

クララ そうそう。生き残るために必死。
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── ロシアのバレエ団ではいかがでしたか。役をめぐっての争いなどはあったりするんでしょうか。

オーロラ 私がいたバレエ団は人数が多いわけではなく争いもなかったんですが、そもそも「この役はこの人」と決まっていて動かないものもが多いんですね。

ただ、その中でも役がもらえる瞬間はあって、例えば怪我など何らかの都合で出演できない時には、新人のダンサーが起用されることがあるんです。

ジゼル あ、ちょっと映画みたいになってきたぞ〜(笑)。

オーロラ ふふふ。実は私、入団して間もない頃、本番当日に代役を経験をしました。

クララ 怖い怖い!! それできたんですか?
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オーロラ 私は見ていると振りを覚えてしまう方なので、なんとかやり切りました。

── 他の団員もいい役のチャンスを狙って振りを覚えておくのでしょうか? オーロラさんはなぜ抜擢されたと思いますか?

オーロラ ロシア人にはすぐ対応できる子が少ないんです。対して、日本人は引き受けたら責任を持ってやり切る人が多いと監督にも信頼されているようでした。

── 運も持っていましたね。

オーロラ そうですね、それをきっかけにちょっといい役をもらえるようになったので、運とタイミングの大切さは実感しました。
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飲み会では主催者の膝にいつも女性が乗っていました

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── 近年では、監督や演出家、プロデューサーによるパワハラやセクハラが露呈して大変な問題に発展したケースがいくつもありますが、ご自身の経験としては何かありますか。

ジゼル 飲み会の時には主催者の膝に必ず女性が乗っている劇団がありました。誰もが知っているような有名劇団ですよ。周りの人は平然としていたので、これがここの常識なんだなと思いました。

── 生き残りのためにすり寄る役者もいれば、喜んで膝に乗せる人もいると……。

ジゼル そうです。立場のある人に「〇〇さ〜ん♡」ってくっついていく子もいるので、そこで成り立っていればWin-Winなんだと思いますよ。

── それで役をもらうこともあるんでしょうか。

ジゼル それが理由かは知らないですけど、その彼女は次の作品にも出てました(笑)。
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クララ 私はダンサーとして参加する予定だった舞台で、急に抜擢されたような追加の役をもらったことがあります。

何だか変だなとは思っていたんですが、最終日に演出家に呼ばれて「次の作品、何の役が欲しい?」って聞かれたんですよ。

オーロラ えええ〜〜! 怖い!

クララ 帰りに駐車場の方に向かう途中だったので、あわよくばそのまま車に乗せてどこかに連れて行こうと思っていたんでしょうね。だから「あ、大丈夫です!」って言って帰りました。

ジゼル クールすぎる!

── そうやって誘う悪い人もやっぱりいるんですね。

クララ ただこれらは10年くらい前の話で、今はだいぶ変わったと思います。顔合わせの時にあらゆるハラスメントを行わないと声明を出すところもありますし、契約書に外部の第三者委員会の連絡先が書いてありますし、気をつけているなと感じます。
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自分自身のために美しくしていたい

── 最後に、皆さんは常に、美しい身体表現を競う環境に身を置いているわけですが、今、外見に関して気にしていることはありますか。

オーロラ 私自身、摂食障害も経験して、外見を気にした時期ってかなりあるんです。

けれども今思う一番大切なことは、何事にも謙虚にまっすぐに向き合うこと。バレエでも、普段の生活や他の仕事していても、それを一番感じています。

ジゼル 私はもう競争自体を気にしなくなりました。もちろんある程度はメテナンスが必要ですが、30歳を超えて抗えないものは多くなります。そうした中で、自分らしい美しさをもった人になりたいと思っています。

クララ 私も同じ。見た目はもちろん大切ではあるけれども、なりたい自分でいられればそれが一番いいかなって思うので。

今の私にとって、バレエは心を開放させる時間になっています。真剣に向き合っていた時は苦しかったんですけど、ちょっと距離ができたらより好きになれた。

バレエの時は身体の線が出るものを着るから、誰かのためではなく自分のために体型を保っています。

ジゼル 私にも自分自身のために美しくしていたいという思いはありますね。舞台のためでも、誰かの意向でもなく。

もちろん、可愛い服を着るのも大好きですけど、それ以上に自分自身の内面も見た目も、基本的な部分を磨く、そっちの美しさの方が興味がある。
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── 皆さんが考える、人としての美しさとはどういったものですか。

オーロラ 細く力強い筋肉を付けることや、客席からの見え方を磨いてきましたが、結局は物語や人物に対してどれだけまっすぐに素直に向き合えるかが大切だとわかりました。それができている時に、美しいと感じてもらえるのかもしれません。

ジゼル 私は、飾らない自分らしさを発信できている人たちを美しいと感じます。

── それは潔さを感じて?

ジゼル 強さかもしれない。自然なんだけど、そのままの自分でいられるという強さ。芯がある女性を美しいと感じるのかもしれない。

クララ それは私も共感する。以前、仲 里依紗さんが「職業・仲里依紗、副業・女優」と言っていて素敵だなと。何かになろうとするのではなく、自分自身が心地よく生きていこうとする姿勢が、私の思う美しさなのかもしれません。

ジゼル あ〜、それはカッコいい。そういう強さを持った女性を美しいと感じます。

── 今回、バレエとミュージカルの舞台裏について聞かせてもらって、外見と身体表現の美しさを競い、その上で難しい人間関係も乗り越えていかなければならない厳しい世界なのだと実感しました。その中でも、3人は外見の競争よりも内面の美に重きを置いている点に、「美しさ」の奥深さを感じさせられました。

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