2020.03.31
ワインの栓、コルクのほかに幾つ言えますか?
5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多いときは月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。
- CREDIT :
文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)
今回はワインの「栓」(=クロージャー)についてご紹介していきたいと思います。
1.天然コルク
天然コルクの問題点は2点あります。ひとつはワインの代表的な不快臭としてこのコラムでも繰り返し取り上げてきた「ブショネ」の原因となるTCAを発生させるリスクがあることです。最近は生産者やコルクメーカーの努力により発生率は格段に下がった(*1)と言われていますが、それでもゼロにはなりません。
もうひとつは耐久性。高級ワインの場合、飲まれるまで数十年の年月を経るのも珍しくありませんが、その間にボロボロになってしまうことがあります。
2.圧縮コルク
3.合成コルク
コルク以外のタイプもご紹介しておきますと……
4.スクリューキャップ
アルミニウム製の栓を手で回して開けるので道具を必要としません。代表的なものに上のSTELVINがあります。ブショネの原因となるTCA発生の余地がないことがメリット。
また、天然コルクよりも気密性があり酸素を遮断出来るため、ワインの品質保持に重要とされる酸化防止には有効とされています。ニュージーランドやオーストラリアでは、このスクリューキャップがクロージャーの主流。
一方で、酸化は防止できるが従来の天然コルクによるような自然な熟成が行われないとの意見もあり、ワイン評論家の間ではさまざまな論争が続いています。また「高級ワインにはやはり天然コルク」という、依然とした保守的な消費者意識も無視できないところです。
5.その他
時代の流れなのか天然コルクの使用比率は次第に減少傾向にある一方で、印象に残ったワインのコルクを記念に取っておくのもワイピの楽しみのひとつでもありますね。
私はそれほど熱狂的なコルク・コレクターではありませんが例外がひとつだけ。3年ほど前にブルゴーニュ地方Vosne-Romanee(ヴォ―ヌ・ロマネ)村の一級畑Cros Parantoux(クロ・パラントゥ)を8アイテム一度に飲み比べたことがあり、その時のコルクはフレーミングして飾ってあります(*2)。
ワインの栓のさまざま、いかがでしたか? ワイン会やワインショップで、栓に注目してみるのも面白いかもしれません。
註
(*1)
ロマネ・コンティで有名なブルゴーニュのDRCでは、コルクを打栓する前に180℃近くまで加熱し、人間がその臭いをチェックすることによりTCAの発生を防止するという品質管理をしているそうです。
(*2)
写真のコルクは左から順に、
Meo-Camuzet Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1999
Meo-Camuzet Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1995
Meo-Camuset Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1989
Henri Jayer Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1999
Henri Jayer Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1980
Emmanuel Rouget Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1999
Emmanuel Rouget Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1998
Emmanuel Rouget Vosne Romanee 1er Cru Cros Parantoux 1989
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● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。