2020.04.14
ワイン好きなら気になる、ワイン資格の基本とは
5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多いときは月に3桁の金額をワインに費やす超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。
- CREDIT :
文・写真/吉川慎二 イラスト/Isaku Goto, オキモトシュウ(吉川慎二氏)
さて、モテるワイン道、今回はワインの資格について考えてみたいと思います。
モテるワイン道入門~ワインの資格編
資格が欲しい人は頑張って取得すればよいし、興味がない人は目指さなくても構いません。ワインを人生の友にするうえで一番大切なのは「いかに楽しむか」であって、資格ではありません。
それに、資格があったところでモテるわけではありません。既にワインモテ値のところで考察済みの通りですが、資格を鼻にかけているワイピはP値(=ワインプレゼン能力、即ち工夫や気配りができる能力)が低く、むしろ悲しいくらいモテないです。それでは、具体的な資格について見ていきましょう
一般社団法人 日本ソムリエ協会の呼称資格
現在あるのは、
J.S.A ソムリエ
J.S.A ワインエキスパート
J.S.A ソムリエ・エクセレンス
J.S.A ワインエキスパート・エクセレンス
の4種類で、いずれも年1回試験があります。
ここで、あまり広くは知られていない捕捉として、
1.ソムリエの役割は驚くほど広い。
ソムリエの代表的なイメージは、レストランなどでワインなどを勧めてくれる役割の人ですが、実は担当するのはワインだけではありません。ワインはもちろんのこと日本酒やカクテルなどのアルコール飲料全般、それに加えてミネラルウォーターやお茶・コーヒーなどのノンアルコール飲料、葉巻やお香などもカバーします。
そして、テーブルでの接客サービスだけでなく、ワインを始めとするこれら飲料の管理・流通・販売・教育に携わっている人もソムリエに含みます。また、ソムリエの呼称資格はこれらの「職業」についている「プロフェッショナル」でなければ受験することができません。以前はワインアドバイザーという資格もありましたが、2016年にソムリエに統合されました。試験科目としては一次試験(筆記)、二次試験(テイスティング・論文)、三次試験(実技)となかなかのの長丁場です。
2. ワインエキスパートとはなにか。
これに対して、ワインエキスパートの受験資格は20歳以上であることだけです。主に愛好家を対象とした資格だからです。ワイピが持っている資格はこちらに該当する場合が多いです。試験科目は一次試験(筆記)、二次試験(テイスティング)とソムリエに比べて少ないですが、難易度的にはほぼ同等、年度によってはソムリエよりも難易度が高いと言われる年もあるくらいです。
「職業」についてないだけであって「専門家(=エキスパート)」であることに変わりはないのです。従って、ちょっとワインにくわしい生半可なレベルでは到底合格しません。多くの受験生がワインスクールの受験コースに通って必死に勉強します。
3. それぞれの上位資格
ソムリエ・エクセレンス、ワインエキスパート・エクセレンスはそれぞれの上位資格だと思ってください。以前はシニア・ソムリエ、シニア・ワインエキスパートと呼ばれていましたが、2018年に現在の呼称に変更されました。こちらは、ソムリエ、ワインエキスパートに輪をかけたスーパー難関資格と言ってよいでしょう。ワイン会でもなかなかお目にかかる機会は少ないのではないでしょうか?
ちょっと話がそれますが、日本ソムリエ協会では3年に一度、ソムリエ、ワインエキスパートそれぞれの資格保有者の日本一を決めるコンクールを開催しています。2020年は、第9回全日本最優秀ソムリエコンクールが開催される年で、本来は3月に予定されていましたが、一旦5月に延期。さらに先日、日程未定のまま再延期が発表されました。この状況なので仕方ないですね。私も観戦を申し込んでいましたので、一日も早く事態が終息し、開催されることを願ってやみません。全日本J.S.A.ワインエキスパートコンクールは、来年に第9回が開催される予定です。
ちなみに私は2012年、第5回のワインエキスパートコンクールで優勝しております(自慢になってしまってすみません)。コンクールは、選手たちは必死ですが、観戦はなかなか興味深く楽しいです。機会があれば本コラムでも取りあげてみますね。
J.S.A. ワイン検定
ワイン入門編ともいえるブロンズクラスと、少しランクアップしたシルバークラスがあり、前者は年6回程度、後者は年2回程度開催されています。ブロンズクラスはまったくワインの知識がない方でも、講習後の試験で合格できるレベルです。シルバークラスはブロンズクラス保有者を対象とし、やや上級レベルです。
講師は上述したワインエキスパート資格保有者が担当し、筆記試験のみでテイスティングはありません。ワインの楽しさを知っていただくのが目的の資格で、私もほぼ毎回講師を務めています。ワイン検定から本格的にワインにハマり、ワインエキスパート試験を目指す人も多いようです。
A.S.I. International Sommelier Diploma
一言で言うと、ソムリエ・エクセレンスのさらに上の国際資格です。日本ソムリエ協会が所属している国際ソムリエ協会(Association de la Sommellerie Internationale、略称A.S.I.)が認定し、試験は選択言語(原則、英語またはフランス語)で行われます。2012年に制定された比較的新しい資格で、保有者は全世界に300人程度しかいません。日本人は比較的多く、いままでに60名程度合格しています。
日本ソムリエ協会関係だけでもなかなかたくさんの資格があるものですね。
次回はその他の団体の資格について見ていきましょう。
連載Vol.02 「モテるのは片手にワイングラス8脚をモテる男」
連載Vol.03 「一目置かれるワイン会の掟、お教えします」
連載Vol.04 「ワインのカジュアル・フォーマルはここで決まる!」
連載Vol.05 「ダジャレで選ぶワイン、ありやなしや」
連載Vol.06 「ワインを愛するならまず『ワインセラー』を買いなさい」
連載Vol.07 「人のワインを笑うな、けなすな、値段を聞くな」
連載Vol.08 「古酒は小さなグラスにちょびちょびと注ぐべし」
連載Vol.09 「あなたはなぜワインを飲むのか? と聞かれたら」
連載Vol.10 「ワイン会は店選びが9割⁉ 幹事の心得いよいよ最終編へ突入」
連載Vol.11 「宴会幹事必読! ワイン会の開催までにやっておくべきTo Doリスト」
連載Vol.12 「ワインを楽しむ男はなぜモテるのか。公式化してみた」
連載Vol.13 「高価なワインをご馳走すればモテる」と勘違いしていませんか。
連載Vol.14 「こんなワイン好きは嫌われる、ワイピのNG行動とはなにか」
連載Vol.15 「ロマネ・コンティよりオーパス・ワンに興味を示す女性ってアリ⁉」
連載Vol.16 「パーティでモテるスマート・エスコート術をご指南」
連載Vol.17 「女性の気持ちは高級ワインでは買えません」
連載Vol.18 「『ピンドン』『ロマコン』……平成のイタい略語はモテません」
連載Vol.19 「教えて! 『ぼくらはどんなワインを飲めばいいのですか?」
連載Vol.20 「ワインのボトルを見るだけで達人はこれだけ語れます」
連載Vol.21 「手がかかるけど可愛いじゃじゃ馬、マグナムのワインはこう乗りこなす」
連載Vol.22 「モテるワインの「抜栓」、基本から教えます」
連載Vol.23 「意外に知られていない、かっこいいワインの注ぎ方」
連載Vol.24 「ワインの栓、コルク以外にいくつ言えますか?」
● 吉川慎二 / Shinji Yoshikawa
1962年三重県生まれ。
東京大学法学部卒業後、三井住友銀行、メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資家・経営コンサルタント。
2007年、日本ソムリエ協会のワインエキスパート資格を取得。12年にシニアワインエキスパートへ昇格し、同年に開催された第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝。14年にはエキスパート資格者で初の日本ソムリエ協会理事に就任、2018年まで2期4年務めた。漫画「神の雫」に登場する吉岡慎一郎のモデルともいわれ、プロフィールイラストは「神の雫」作画のオキモトシュウ氏によるもの。